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――お気に入りの怪獣はいますか?

唐沢 この世界全体が好きなので、誰ってことはないですね。「ウルトラファイト」には「このキャラでないといけない」という話が一切ない。例えばエレキングの役をイカルス※に変更しても、ストーリー的には全く関係がないんです。みんな同じでみんないい、の世界だね。

※ウルトラファイト版の名称。他のウルトラ作品では「イカルス星人」と表記される

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岩佐 衝撃なのは、性別も変わっちゃうところですよね。怪獣が女性になったりするんです。今までとは違うイカルスなのか、いつものイカルスが性転換したのか、そのあたりが全く分からない。その自由さが良い。

ウルトラファイト DVD BOXの特典としてついてくる、ソフビ人形たち。左から、ウー、エレキング、イカルス。© 文藝春秋

性転換、寸劇、アングラ、なんでもアリの自由さ

唐沢よしこ(以下、よしこ) イカルスが女、エレキングが男役だった回もありました。イカルスが「あーら、待ってたのよ、エレちゃん」とか言って。で、エレキングがお花を渡すと、イカルスが「食えねーよこんなもん!」って怒って喧嘩になる。結局、女の方が強くてエレキングが負けちゃう。翌日にエレキングがお魚を持ってきて、ナレーションで「怪獣島も、女性上位のようであります」ってオチ。

岩佐 子供ほったらかしですよね。一切無視。

唐沢 あの話は子供ながらに「いやー……すごいものを観ちゃった」と思いました。それまでは一応、怪獣同士の血なまぐさい戦いを表現していたけど、徐々に寸劇のようなコントの世界に変わっていったので、「見事だなあ」と子供心に思いました。

唐沢なをきさん、唐沢よしこさん、岩佐陽一さん。©文藝春秋

岩佐 この番組に関わられていたプロデューサーの故・熊谷健氏いわく、新撮編※は、朝5~6時に、ワゴン車一台で出発していたとか。前日まで撮ってるわけですから、ぬいぐるみは汗が乾いたものから使う。「どの怪獣にしようか」ではなく、「湿ってる/湿ってない」で決めていたそうです(笑)。
台本も当然ないです。女性週刊誌とスポーツ新聞を道すがら読んで、「今はウーマン・リブがすごいらしい」「よし、じゃあそれでやろう」という話になる。コンセプトだけノートに書き出して、なんとなく動きを撮って、帰ってくる。その後、山田さんにテーマだけ伝えて、喋ってもらう。だから「女性上位」なんて言葉が出てくるんです。そんな作りだから、子供向けになるわけがないですよね(笑)。

※「ウルトラファイト」は、過去作のバトルシーンを切り出して再編集した「抜き焼き編」と、ウルトラセブンと怪獣たちのバトルシーンを新たに撮り下ろした「新撮編」がある。