名誉棄損で6千万ウォンの訴訟も
しかも圧力は脅しだけに止まらなかった。李宇衍氏が、16年にソウルの龍山駅前に建てられた徴用工像等のモデルが、旭川新聞に掲載された日本人の労働者の写真であると主張したことについて、像を制作した作家であるキム・ウンソン、キム・ソギョン夫婦は「自分たちの想像の産物だ」と反論。李宇衍氏に対し、6千万ウォンの名誉棄損の民事訴訟と刑事訴訟起こしてきたという。
「訴えられても、私は主張を曲げませんが、言葉を控えたりして、慎重にならざるを得ないですね。しかし、新しい流れは止められません。こういった本がベストセラーになり、『反日種族主義』に反対する声が出始めている。こういう流れは韓国社会の中では初めてのことで、これから日韓は新しい関係性を築くことができるのではないでしょうか」(李宇衍氏)
対抗して『日帝種族主義』を緊急刊行
興味深いのは、韓国内では『反日種族主義』に対抗するように、『日帝種族主義』という本が緊急刊行されたことだ。同書を発行した東国大学の黄台淵(ファン・テヨン)がメディアの取材を受けた記事では、民主研究院と同じように苛烈な黄教授の言葉が並んでいる。
〈『反日種族主義』の筆者たちは、古くから学界で反韓・附倭奴(黄教授は「“附倭”(倭国に付き国を害する人)に、“人より劣った奴隷”という漢字を加え、“附倭奴”と呼んだ」と言葉の意味を説明している)をしてきた人たちです。学問の自由があるとは言え、彼らはもう学問を越えて政治活動をしています。法律で彼らを処罰し、二度とそのような人々が出ないようにしなければなりません〉
ソウル新聞(ネット版 10月17日)も同様の内容を報じている。
〈本(『日帝種族主義』は)は『反日種族主義』を単に学術的に論駁するだけにとどまらない。総論を書いた黄台淵教授は、「外国の“歴史否定罪処罰法”の先例によって、“日帝植民統治擁護行為及び日本の歴史否定に対する内応行為処罰特別法”を制定しよう」と主張する。『反日種族主義』の著者らがとんでもない主張をして私腹を肥やす一方で、彼らのために発生する社会的被害が大きいという理由だ〉
黄教授は「国民運動を起こして最終的に彼らを処罰することが、この本の究極的な目標だ」とメディアで繰り返し語っている。しかし、残念なことに『日帝種族主義』の売上げは芳しくないようで、ベストセラーとは言いがたい状況にあるようだ。
『反日種族主義』が日韓でベストセラーになったことは、韓国社会が「言論の自由」を受け入れることが出来るのか否か、その試金石となっているようだ。