最後の被害の際は、校舎内の倉庫に呼び出された。「服、脱いで」。X被告の指示に、恐怖をおぼえたDさんは着ていた服を全部脱いだ。そして、X被告はDさんの陰部を指で触ったり、胸をなめたりした。さらにX被告はズボンを脱ぎ、Dさんに局部を握らせ、「なめて」「もっとなめて」と執拗に求めた。Dさんが手を引っ込めると、X被告は諦めたようで、「汚れたから口とか手、ゆすいでおいて」と言い残し、Dさんを解放した。X被告はこの日も、一部ではあったが、犯行をカメラで撮影していた。
出廷したDさんは、繰り返し被害に遭っても周囲に相談できなかったのは「家族に心配をかけたくなかった」からという。「できれば死刑になってほしい。それが無理なら、できるだけ長く刑務所にいてください」。
検尿容器の写真を撮るなどの「異常な性癖」
裁判では性犯罪者を支援するNPO法人で診察した精神科医の意見書も証拠として提出された。それによると、X被告は高校生時代から女性の下着を盗むようになり、修学旅行では同級生の下着も盗んだ。その後もたびたび他人の家の風呂の窓から女性の入浴姿を覗いていたり、盗撮行為をしたりしていた。
小学校の教師になってからも犯罪的ともいえる異常な性癖は治らず、尿検査で回収された検尿容器の写真を撮ったり、プールの授業中に児童が着替えた教室に入り、脱いだ服を撮影したりしていたという。
この意見書によると、X被告は小児性愛障害や、人の気持ちを読み取るのが苦手だということを示す前頭葉機能障害などがあると診断された。
X被告は、検察官から「異常な性癖を持っているという認識はなかったのか」と問われると「おかしいとは思っていたが、自分で(性癖を)変えられると思っていた」と答えた。被害者の1人の代理人弁護士も「小学生の幼い女の子に近づくために小学校の先生を志したのか」と問いただしたが、「違います」と語気を強めて否定した。
X被告はおおむね起訴内容を認め、謝罪の言葉を述べはしたが、裁判では真摯な反省の態度を取っているとは到底思えない言動もあった。被告人質問で検察官が、押収された犯行の映像データが残るハードディスクやノートパソコンの所有権を放棄するかと問うと、返答に窮し、「弁護士の先生と相談させてください」と回答を留保する場面もあった。