皇位継承の問題をどのように捉えるべきか、「週刊文春デジタル」では各界の識者に連続インタビューを行った。最大の焦点は「女性天皇」「女系天皇」を認めるか否かだ。今回は、脳科学者・中野信子氏に聞いた。

 皇位継承問題については複数の主張が混在しています。女性宮家を考慮すべきとおっしゃる方、一代限りであれば女性天皇を認めるというお考えの方、さまざまおいでですが、天皇家が存続していくことを望むという趣意には多くの方の意見が一致するものだろうと思います。

ADVERTISEMENT

 この問題をめぐっては実にたくさんの議論がなされています。ということは、国民全体が皇室に強い関心をもっている証拠なのだと、改めて感じます。皇室を尊び、敬愛の心を持って、今後も大切な存在として敬い続けていきたい――そんな気持ちの表れなのではないでしょうか。

中野信子氏 ©文藝春秋

 皇位を継承するにあたって、男系の男子として該当の方がいらっしゃらない場合、皇籍を離脱された方に再び戻っていただくなどの方途を提案される方もおいでです。たしかに、当面の課題を回避するに当たっては有効な方法であろうかと思います。

 ただ、かつて存在した側室を持つ仕組みを取り入れることが、現代の先進国における社会通念とはやや相容れない性質を持つことから事実上難しいとなると、いずれ同じ問題に直面する可能性は完全には排除できないでしょう。またその都度、同じ議論を繰り返すとなると、国際的に見てやや奇異な印象を持たれてしまうのではないかという危惧を持ちます。

 極論をいえば、皇統を維持するために、最新科学のバイオテクノロジーを使った生殖医療を積極的に導入するという考え方もあり得なくはないのです。「男系男子に限る」という秩序を忠実に守らなければならないという原則を重視するのであれば、畏れ多いことながら、天皇家の男系の遺伝子を用いて代理母に出産してもらう、という選択肢すら可能性としてはあり得るということになる。

天皇皇后両陛下と愛子さま ©JMPA

 しかし現実的には、側室を持つという一夫多妻の制度の導入にも、バイオテクノロジーを頼るという考え方にも、かなり抵抗のある方が多いのではないでしょうか。そんな話をするだけで「けしからん」とお怒りの方も、相当数いらっしゃるに違いありません。

 こうした問題が混在する中ですが、議論が盛り上がっていることを奇貨として、国民全体が、天皇制について本当に維持したいものは何なのかということを、いましっかり考えるべきときなのかもしれないと思っています。