BPOはヤラセではなく「不適切な手法」と判断した
11月8日、BPO放送倫理検証委員会は『クレイジージャーニー』について審議入りとすることを決めた。BPOは権力を行使する機関ではないので、結果はTV局に対して何ら強制力を持たない。ただ、その決定内容はHPに発表され、普通は公表されない番組作りの舞台裏が事細かに語られる。
ちなみに「審議」というのは重大な放送倫理違反の疑いがあった場合に使われ、放送に虚偽の疑いがある場合は「審理」となる。BPOはTBSと同じく、今回の件を「ないもの」を「あるもの」とした「ヤラセ」(=審理)ではなく、演出上で起こった「不適切な手法」(=審議)と捉えた。実際の現場では、どのような「不適切な手法」があったのか、今後の調査結果が注目される。
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— クレイジージャーニー (@Crazy_Journey) August 14, 2019
ヤラセで表現できるほど甘い番組ではなかった
「テレビの渦の中に巻き込まれ、茶番でこういう場所に連れて来られ、断れるわけもねぇし。だからテレビの連中を俺はマジ嫌いなんだ」
真木蔵人、『BAZOOKA!!! FIGHT NIGHT IN THE OUTSIDER』高垣勇二vs大井洋一 煽りVTRより
番組作りはある種の虚構で成り立っている。しかし、すべてが虚構ではない。
今回の『クレイジージャーニー』の件で嘘がないと断言できることがある。それは、出演者が掴んだ生物の感触とその時の感情だ。事前準備を知っていようといなかろうと、加藤さんは生物に噛まれて大怪我をする可能性があった。それはディレクターも同じで、事前に用意したニシアフリカコビトワニの鋭い牙が並ぶ口をガムテープでグルグル巻きにしたとき、彼は「ヤラセ」だから安心などと思うはずがなく、とんでもない恐怖を覚えたはずだ。
「ヤラセ」からも「リアル」は生まれる。『クレイジージャーニー』は、すべてが「ヤラセ」で表現できるほど甘い番組ではなかった。だからこそ、その苦労が疑われないように細心の注意で、演出を試行錯誤してほしかった。