文春オンライン
沢尻エリカ、塩谷瞬、高岡蒼佑、小出恵介……映画『パッチギ!』卒業生の波乱万丈

沢尻エリカ、塩谷瞬、高岡蒼佑、小出恵介……映画『パッチギ!』卒業生の波乱万丈

小栗旬は沢尻に警鐘をならしていた?

2019/12/01
note

《高岡は、素性はあまり聞かなかったけど、千葉、東京のなんかヤサグレな世界に揉まれて、十代を過ごしてきたような、苦痛や不幸を背負い込んでる顔もしてたわ。不幸と言うとアレやけど、まあ、幸の薄い顔やったね。何か風当たりが強いところで揉まれてきたような感じがあったんよ》(※1)

「最近の日本映画はつまらないものばかりで……」

 これに対し、沢尻は「事務所から言われて来た」みたいな平然とした顔をしていたという。そこで、プロデューサーが「最近どんな映画を見た?」と訊くと、《う~ん。最近の日本映画はつまらないものばかりで……》と返して驚かせる。井筒いわく《この子、生意気なこと平気で言うなあって。それで気に入ったってわけ》、《「つまらないのばっか」って言われた方が、そりゃあ、役者としてモノを見る目がしっかりしてるな、と思いますよ。それに、それほど自分の意見を率直に言えるヤツなら、素直でやりやすいんじゃないかとも思ったしね》(※1)。

『パッチギ!』監督の井筒和幸 ©文藝春秋

 沢尻はさらに、最後に「最近、ショックやったことは?」と訊かれ、《兄がバイク事故で死んだことです。まだ引きずってはいますけど、今はようやく吹っ切れかけてます》と打ち明けた。「日本映画はつまらない」と言ったあとに、そんな話もすぐにできる彼女に、井筒はグッときたという。

ADVERTISEMENT

塩谷瞬の壮絶な生い立ち

 撮影に入ると、沢尻は一度テストして、監督が気づいたことを指摘すれば、ほとんどNGなしで的確に演技をしてみせたという。これとは反対に、撮影でスタッフ陣から怒られ通しだったのが塩谷だ。しかし、それも彼はどれだけ責めても耐えられると、オーディションの段階でわかっていたからこそ、スタッフたちも叱っていたのだと、井筒は話す(※1)。

 そんな塩谷の壮絶な生い立ちを井筒が知ったのは、撮影も終わりがけだった。中学の頃にはすでに家に両親はおらず、近所の人や地元の先輩に面倒を見てもらいながら、16歳のときには飲み屋を任されていたという。それを知っているだけに、井筒は彼に女性スキャンダルが持ち上がったときも、《そんな人間の素性も知らずに、やれ二股や四股やって、ガタガタ言う筋合いは誰にもないよ。だって、普通の家族がいる生活をまったく知らない人間の思いって想像つかないでしょ? 俺もつかないよ》と報道に批判的だった(※1)。