こうの せっかく出したんだから、いろいろとつなげたくなるんですよね。あのときに使ったやつあったから、これやっとくか、みたいな感じです。
片渕 なるほど。我々もできるだけ読み解こうと思って、たとえば、この人物があのとき着てた服がこの場面でこうなって、最後にはこうなっていく、みたいなのを追っかけて。さらに、「じゃあ、この時点ではどうなのかというのを入れちゃったら?」って、段階を増やしてちょっと膨らましているところもあります。
こうの ええ、ええ。ありがとうございます。
──監督、結局すずさんは服を何枚持ってるんですか?
こうの そんなんも調べてるんですか?
片渕 いま、にわかには答えられないんですけど、だいたい枚数は定まってるんですよね。逆に言うとね、それ以外のものを洗濯物で干せないんです。洗濯物を干してるシーンに、誰のかわからない服は出せないんですよね。ちょっと我々のほうで失敗したのは、茶碗の模様をそれぞれ決めたんですけど、「周作のお茶碗にいつもの柄が入ってない!」とかが出てきちゃって……。
こうの 茶碗の柄とかもそうだし、食器の大きさを合わせたり、全部の食器が乗るように食卓を描かなきゃいけなかったり。で、ひとりに何個(食器の数)って決まっているし、食卓を描くのは意外とたいへんじゃないですか?
片渕 幸いね、時局が深まると、食品自体がなくなるので、出てくる食器の数がすごい減るんですよ。
こうの あ、そうですね。
片渕 全員でおかずが漬物しかないとか、そんな感じになっていくので。だからそれはそれでやりやすかったんだけど、漬物が乗ってるお皿が、結婚式のときの一番大きな皿だったりして、大皿に漬物これだけ……っていうのが、豪華なのかなんだかわからないから、小皿に描き変えましょうとか。
こうの 皿だけでも豪華に、みたいな。
片渕 そうそう。そうやってお皿の数とか、着てるものの数と種類だとかを決めていって。最初は靴下の色も決めようと思ったんだけど、さすがにそれは無理で、でも靴下を何足持っているかは決めようと思ったんです。
こうの 靴下はけっこう回転が早いかもしれないですよね。
片渕 回転は早いんだけど、戦時中はやっぱり入手が困難だったらしいから、繕いに繕って使ってたんじゃないかな。なるべく履かないようにするとか、寒いときだけ履くとか。