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片渕 あれが1色じゃなくて、5色くらい使ってあって……。

こうの あ、ええっと……、そこまでやらなくてよかったんですよ(笑)。いまさら申し訳ないですけど(笑)。

片渕 いや、それはほら、それで、僕らもできるだけ原作にカラーページがあるところはちゃんとやろうと思うので……。

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こうの ああ、はい。あの服のせいで……。

ポスターのあの服 単行本下巻カバーイラストの服と同じ。このワンピースは、左の絵のように「第35回 20年7月」では、裾に別の布を継ぎ当てて修繕している。下巻カバーイラストは折り返し(表2)部分に右手が描かれており、時系列的に「現実にはありえない絵」になっている。「作中でも鉛筆描きのところは、すべてすずの妄想や空想の出来事です。ここ(折り返し)から先は色鉛筆で描いているので、ここから先は右手の世界です」(こうの) ©こうの史代/双葉社

片渕 あの洋服に模様と色がちゃんとついて、それをすずさんが着て走るというのを実現したくて、でも途中までは、服の模様がめちゃくちゃになるんじゃないかと思っていたんですよ。でも、作画スタッフがものすごいがんばりを見せて、まだ動画チェックを通していない素上がりの状態を見ても、全然ブレていないものが上がってきて、びっくりしています。こんなに模様のある服を着ている人が動き回るアニメーションって、まあ滅多にないだろうな、っていう感じになっています。

こうの なんかね、本筋と関係ないところで、そんなにたいへんというのも……。

片渕 いや、たぶんそれが本筋と同じくらいに大事だと思うんですよ。 生活のディテールというのは、服が無地だったら絶対に出ないと思います。だって径子さんなんて、防空頭巾にも柄が入っているんですから。

防空頭巾にも柄 径子の防空頭巾に柄が入っている(下段)。「第29回 20年4月」より。 ©こうの史代/双葉社

こうの あれ、そうでしたっけ? でも、和風の布は何かしらの柄が入っているから、防空頭巾につくり直しても、柄が入ったものになりますよね。

片渕 そうしないと洋ラシャみたいになっちゃう。

──原作で服や着物に柄があったから、片渕監督も衣類の変遷をたどれたということでしょうか?

こうの なるほど。洋服とか着物の柄や模様は、考えるのが意外と難しいんですよ。私はいっつも締め切りギリギリだったので……まあ、それは申し訳なかったんですけど……、描くのに手間がかからない柄を描こうと思っていました。でも、手間がかからない柄となると、なかなか数が限られてくるんです。なので、そういうことで使い回しもやっていました。