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【香港デモ】警察当局がウォーターキャノンで発射した「透明な水」と「青い水」の有毒物質《現地写真ルポ》

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会, 政治, 国際

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 前線で、黒いマスクをして戦っている子たちが「勇武」と言われるデモ隊です。中心メンバーは15~18歳くらいの若者で、下は12歳くらいから、上は20歳前後までいます。彼らは多くが学生なので、夜にデモへ参加して、朝には学校へ通うという生活を送っています。友達同士で2、3人一緒に参加する子もいますし、1人で行く子もいる。カップルで参加しているという子も意外に多い。彼らの多くは親に内緒でデモに参加しているようですが、なかには「親に言ってないけど、たぶん知っていると思う」という子もいました。親が政府関係の仕事をしているという子もいるので、そういう子は家出をして友達の家を泊まり歩きながらデモに参加しています。

後方から近づいてくる警察の動きや位置などを確認するデモ隊 ©キセキミチコ
「今香港で起きていることは、未来の日本でも起こりうる」と訴える学生デモ隊 ©キセキミチコ

デモに身を投じる若者を支援する香港市民

 過激なデモ隊の姿がメディアに取り上げられることが多いですが、実はデモ隊を後方でサポートする大人たちもいるんです。デモ隊の子たちは多くが学生です。お金がないので食費を削って、警察に対抗するためのギアやヘルメットなどを購入しています。だから彼らを支持する一般人が、「テイクフリー」と書いた段ボールに水などをいれて街中に置いていたり、カロリーメイトやおにぎりなどの食べ物を配ったりしています。

 香港では今「警察・政府」vs「親中派をのぞく香港市民」という構図になっています。年配者には親中派が多いので、比較的若い世代に香港政府への不満がたまっているということでしょう。しかし、いままでは実際にどれくらいの反政府派がいるか目には見えなかった。でも、11月24日の区議会議員選挙で民主派が大勝し、かなりの数の反政府派がいるということが可視化されました。

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高級ブランド店が立ち並ぶ中心街で、政府や警察への抗議の声を上げていた一般人を離散させるために警察が催涙弾を発砲 ©キセキミチコ
トラムの運転手。警察による一般市民への攻撃でトラムが通行不可になったため、様子をうかがっている ©キセキミチコ

 しかし一方で、香港にはデモを迷惑がっている人もいます。中国人や香港人は仕方がないと思っている人が多いですが、欧米人ら駐在員は仕事の邪魔になる、と煙たがっている。日本人駐在員の奥さんに「昨日のデモすごかったですね」と聞いても、「え? 昨日デモあったの?」という声が返ってくることもありました。香港は東京23区の2倍程度の面積ですが、知らなければ知らないまま生活することはできます。

デモ活動は突如として始まることもある。デモ隊が道路にレンガを積みはじめると始まりの合図。レンガを積むのは交通網を麻痺させて経済的打撃を与えるため。右側の茶色い建物は人民解放軍の宿舎 ©キセキミチコ