昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

【香港デモ】警察当局がウォーターキャノンで発射した「透明な水」と「青い水」の有毒物質《現地写真ルポ》

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会, 政治, 国際

 11月27日、トランプ大統領が香港の反政府デモを支援する「香港人権・民主主義法案」に署名し、同法が成立した。この法律は香港に高度な自治を認めた「一国二制度」が中国政府によって損なわれていないか、アメリカが香港に通商上の優遇措置を与えるのが妥当かどうかについて、国務省に少なくとも1年ごとに検証することを義務付けるものだ。これに対して中国外務省は「独断的な行動」と激しく反発している。

 アメリカを動かしたのは、香港で今も政府への抗議活動を続けるデモ隊だ。「香港人権法」成立を受けて、抗議活動はさらに激化すると見られている。一体、現場はどんな状況なのだろうか。現地で密着取材を続けている写真家のキセキミチコ氏は、現地の様子を「もう内戦ですよ」と漏らした。撮影した写真を公開するとともに、その苛烈な実態を語る。

 私が香港入りしたのは2019年7月です。元々は香港の生活を写真に撮りたくて渡航したので、デモを取材するつもりはありませんでした。しかし滞在中に何度もデモを目撃し、取材しなければいけないという使命感に駆り立てられていきました。デモ取材に本格的に取り組もうと決意したのは、8月31日に起きた出来事がきっかけです。

11月17日に起きた理工大でのデモ ©キセキミチコ

目の前で10代の少年がリンチされ、連行された

 その日、私は警察隊の近くでカメラを構えていました。すると、デモ隊の男の子が警察に捕まった。その子は他のデモ隊と同じように黒いマスクに黒い長袖長ズボンを着ていたので、どんな子だったのかは判然としませんでした。ただ、声や体格からおそらく15、16歳くらいの少年だろうと思いました。

 彼が、警察に捕まる瞬間、咄嗟に私の腕をつかんで広東語で何かを叫んだんです。おそらく「助けて」と言ったのだと思います。でも私は立ち尽くすことしかできなくて、男の子は引き剥がされました。彼は私の目の前で複数の警察官にリンチされ、連行されていった。彼が果たして保釈されたのか、今無事なのか、現在の足取りを確かめるすべはありません。

逃げるときに脱げたと思われる靴と、未使用の火炎瓶 ©キセキミチコ

 この出来事のあとに知ったことですが、取材記者はデモ隊が逮捕される直前に、必ず香港IDと名前を聞くんです。そうでないと、逮捕後に彼らがどうなったかを確かめることができないので。

 デモが始まってから、香港では不審死が相次いでいます。9月には15歳の女子学生の水死体が発見されました。彼女はなぜか全裸だったそうです。逮捕されたデモ隊の行方を調べるすべを確保することは、記者の大事な仕事のひとつなんです。