富山県魚津市には、行列の絶えないラーメン屋がある。国道の交差点の角に、その店は赤い看板を掲げている。曰く「家系総本山 吉村家四天王 ラーメンはじめ家」。
吉村家といえば、いわずとしれた横浜駅西口にある人気ラーメン店だ。ラーメン好きならば、一度は耳にしたことがあるだろう。豚骨醤油ベースのこってりしたスープと太麺を特徴とする、いわゆる「横浜家系ラーメン」の総本山だ。しかし、なぜその家系ラーメンが魚津にあるのか――。
実は、「○○家」と屋号を掲げる「家系ラーメン」の店の大半は、吉村家とは直接の関係はない。数少ないのれん分けされた店のみが「直系」を名乗れるが、それにしても「四天王」が横浜から遠く離れた北陸の地にあるのは不思議な光景だ。
「はじめ家」を2001年にオープンした店主の小沢肇さんに話をうかがった。
一番美味しかったのが吉村家だった
――吉村家では、どれぐらい修行されたのでしょうか。
小沢 1年半、2年近くかな。当時32歳ぐらいでしたね。
――小沢さんは、もともとこちらのご出身ですか?
小沢 生まれも育ちも魚津ですよ。海の方だから、魚を食べて育ちました。
――横浜に行かれたのは、どういうきっかけだったのでしょうか。
小沢 若いころ、しばらくトラックの運転手しとったもんやから、それでご縁があったんです。
飛び込みでお願いしたら、1カ月ぐらい連絡がなかった
――確か吉村家のご主人もトラックの運転手を……。
小沢 ああ、そうです。それで、意気投合といいますか……。前々からラーメンのお店を自分でやりたいと思っていて、いろいろな店を食べ歩いたんです。そうしたら、一番美味しかったのが吉村家だった。どうせならば吉村家で修行させてもらいたいと思って、社長にお願いしました。
――飛び込みですか?
小沢 飛び込みで行ったんやけど「また連絡するわ」って言われてから、1カ月くらい連絡がなかった(笑)。だから痺れを切らして、「ちょっとやりたいんですけど」とまた電話したら、「じゃあ来いよ」と言われて修行が始まりました。本気でやりたいのかどうか、様子見ていたんじゃないでしょうか。