ワシントン条約があるから、今はもう輸入できない
――ちなみに、渡辺さんが思い入れのある商品をお店の中から選ぶとすれば、何を選びますか?
渡辺 そりゃもう、どれも思い入れがあるので選びきれませんけど……そこにある「イソバナ」というサンゴだって、クジラの耳の化石にサンゴがついたものだって、若い頃、遠方から船や飛行機に乗せて、壊れないように、大事に膝に抱えて持って帰ってきたものです。移動中に欠けてしまわないか気が気じゃなかったですね。おかげで手首が疲れましたよ(笑)。
――ご自身の手で! 送ってもらうことはできなかったんですか?
渡辺 「保険付けて送るよ」って言ってくれる友人もいたんですけど、輸送中に壊れるのが怖くて「俺、手で持って帰るわ」って(笑)。お金は返ってきても、壊れた商品は元どおりになりませんから。
この大きな貝も、店内にたくさんありますけど、すべて自力で持ち帰りました。でも、重たくて腰をやられちゃって。ワシントン条約があるから、今はもう輸入できないんですよ。
――じゃあ、とても貴重なものですね。
渡辺 ですねぇ。本当はこういうのをたくさん集めて「水のない水族館」を作りたいんですけど、商売をやろうと思ったら、ある程度売れるものを仕入れないといけないんですよね。お店の使用料も払わなくてはならないので、どうしても続けられないのが残念で……。
――ご自身がお好きなのはもちろん、「たくさんの人に夢を見せたい」というお気持ちでお店をされてきたんですね。
渡辺 今の子どもたちはゲームとかがたくさんあって、我々の時代とは価値観が違うような気がして、ちょっと虚しい気持ちになることもありますけどね(笑)。でも、今の人たちには今の人たちの価値観があるし、ロマンがあるんだろうなと思って。
――周りに小さな子どもがたくさんいますが、恐竜や化石、動物や貝が好きな子は多いですよ。私も小さな頃から好きだったので、ここは夢のような世界です。
渡辺 本当ですか。それは嬉しいなあ。色んなものがあって何屋かもう分かりませんけど、喜んでくれる人がいるなら、ありがたいですよ。
「時間に余裕を持って」行くことをおすすめしたい
今回訪れた「魚津水族館」は現存する日本最古の水族館で、その歴史は大正時代から100年以上も続いている。館内には富山湾に生息する生き物のほか、アマゾン川の大魚、カメレオンなどの爬虫類まで数多く展示されており、多くの家族連れやカップルでにぎわっていた。
イベントも充実していて、この日はペンギンとアザラシの「お食事タイム」を見ることができた。
水族館を見終わったあとはもちろん、渡辺さん一家が営む「真珠コーナー」へ「時間に余裕を持って」行くことをおすすめしたい。正直なところ、それぞれの商品にどんな意味があるのか、その分野に詳しくなければまずわからない。けれども、渡辺さんに聞けばとても楽しそうにストーリーを語ってくれる。必ず、未だかつてない新しい出会いがあるはずだ。
INFORMATION
魚津水族館真珠コーナー
住所 魚津市三ケ1390
電話番号 0765-24-6129
営業時間 11:00~15:00(平日)、10:00~16:00(土休日)
取材協力=魚津市食のモデル地域協議会
写真=山元茂樹/文藝春秋