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日赤「宇崎ちゃん」献血PRポスターは“過度に性的”か 騒動に火をつけた米国人男性に聞いてみた――2019 BEST5

2019年(1月~11月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ネット事件部門の第2位は、こちら!(初公開日 2019年10月20日)。

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 日本赤十字社による漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』とのコラボポスターがネット上で賛否両論を呼んでいる。

 ポスターは、『宇崎ちゃんは遊びたい!』のキャラクター・宇崎ちゃんが、「センパイ! まだ献血未経験なんスか? ひょっとして……注射が怖いんスか~?」と呼びかけるもの。「ポスターに登場するキャラクターの描写が過度に性的では」と問題視する声がある一方で、「性的ではない」「表現を締め付けてはいけない」と擁護する声もある。

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 議論に火をつけたのは、米国人男性のジェイ・アレンさん。街中で見つけたポスターをツイッター上に投稿したところ、瞬く間に拡散されたという。


 なぜツイッターで問題提起するに至ったのか。電話で話を聞いた。

◆ ◆ ◆

――ポスターを見つけた経緯を教えてください。  

ジェイ・アレンさん(以下アレン) 妻が東京出身なので、帰省している最中でした。妻の家族に会うために、年に数回日本に来ているんです。  

 家族と昼食の約束があったので、妻と一緒に新宿駅を出て歩いていたところ、駅のすぐそばにポスターが貼ってあるのが目につきました。  

©iStock.com

 公の場で性的なポスターが貼り出されているのにも違和感がありましたし、よくよく見ると日本赤十字社の公式ポスターだったので、さらに驚きました。妻も同様のリアクションでした。  

――見つけたポスターをアレンさんがツイッターに投稿したところ、賛否両論が巻き起こりました。ポスターは、日本のアニメ表現ではスタンダードなもので、性的な意図はないという声もありますが。  

アレン 胸を過度に強調するポーズやキャラクターの表情など、エロ漫画の中ではスタンダードな表現かと思いますが、たとえば『ラブライブ!』のようなメジャーな作品においては、典型的な表現だとは思いません。 

 そもそも、『宇崎ちゃんは遊びたい』はエロ漫画的な要素がある作品としてスタートしたと聞いています。今はそこから変遷して、そうとも言い切れないようですが。

表現の締め付けになる?  

――「不快だ」という声を受けて、表現を締め付けてはいけない、という意見もあります。  

アレン 表現の自由と、公共の場を安心できる空間にすることの間に、バランスは必要だと思います。  

 特に日本では今、多くの女性が日本社会の女性に対する扱いに疑問を感じています。たとえば、痴漢やセクハラの問題が続いていたり、性犯罪に対する不当な無罪判決が下りて、それに抗議するデモが起こっていたりする。  

 このような環境で、公の場で女性を過度に性的に描写することは、「女性はこのように扱われるべきものだ」というメッセージを発してしまうと思います。  

――「何がOKで何がNGなのか、線引きが不可能では」という声もあります。  

アレン 今回の騒動で初めて「TPO」という和製英語を知ったのですが、まさにTPOの問題だと思います。今回の表現は、TPOにそぐわなかった。  

 こうした絵柄が秋葉原の一角に貼り出されていたのだとしたら、何の違和感も感じなかったでしょう。秋葉原に行く人は、こうした表現を目にすることを予想しているでしょうから。本屋の一角で原作の漫画を見かけたとしても、「好みは人それぞれだから」で済む話です。