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 でもこれだけでは源順の真価が分からないかもしれないので、「碁盤の歌」も紹介しておく。和歌の文字の一部を他の和歌とつなげて、まるで碁盤の目のような形状を完成させるというもの。言葉で説明してもらちがあかないので、現物を見せることにする。
 

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→やとなからおもひこそやれしまくたをいもかつくるはかすはいくいた
 ひ    も    そ    か    れ    き    の
 ほ    ひ    し    ふ    つ    か    み
 に    て    ま    な    れ    へ    つ
 の    よ    に    と    と    し    の
 なしなかはぬみのとひもにりかをきしひこにねつのろここきたかりふ←
 は    れ    し    み    て    そ    か
 な    こ    を    に    あ    の    か
 ひ    し    や    い    か    な    ら
 か    や    き    ひ    し    は    す
 としれかせとちかしきおりきちてしくかふさくつなるけしにとこへの←
 め    の    く    こ    る    ろ    み
 し    に    あ    し    よ    こ    み
 お    は    ま    は    な    と    ゆ
 や    た    の    し    よ    し    る
 れくふゆのつなふもおそをのもれたみきさのなはのうのみぬらなすか←
 な    み    て    を    に    て    な
 め    う    む    つ    あ    つ    ひ
 む    き    す    く    は    く    と
 の    か    ひ    り    ぬ    り    の
 へうへうるほしやしたかひといたみなくなすかはかもたまはてもろこ←
 く    み    た    ぬ    か    つ    こ
 た    よ    く    ひ    ら    ら    ろ
 ふ    と    も    と    さ    ん    の
 ほ    わ    よ    あ    こ    い    あ
 にくならなれわるたわそてきなすきととほはれをひ思のもにれたみさ←
 に    は    に    や    や    か    く
 り    い    み    こ    ひ    あ    な
 を    は    ゆ    ん    と    ら    る
 り    せ    る    は    り    を    さ
↑をみかわはきうもすへかすへかのたのるははねひおもねたしてせかま←
 

 こんなふうに、6マス×6マスの碁盤の目にして色んなところから歌が
読めるように仕掛けてある。現代でいう、クロスワードパズルみたいなも
ん。「田の水の深からずのみ見ゆるかな人の心の浅くなるさま」と右の端
でしっかりと意味の通じる歌が見つかる。外周部は、ぐるりと右に回って
いけば「しりとり」になる。一部の字だけを取って、別の文章へとつなげ
たわけだから、一応アクロスティックの変種といえる。さりげなーく一字
だけ漢字を入れてつじつま合わせをしているところに注目。なんとも心憎
き調整っぷりに、シタゴーさんの美学を感じる。

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 それではこの36のブロックの中に、何首の歌があらわれるか。ほとん
どの人は外周と縦横で計14首と数える。しかし実はもっと沢山あるとい
う説があって、合計で50首が隠れていると言われる。しかしどう探して
も私には見つけられない。どうやったら残り36首が見つかるのか。もし
あなたが見つけることができたなら、ぜひとも私にご一報をください。と
りあえず、短歌とはそもそも言葉遊びの精神に溢れたものであることだけ
が、どうしても伝えておきたかったこと。そのために、シタゴーさんのこ
とを紹介しておきたかったのだ。私には彼ほどの技巧は、とても凝らせそ
うにない。それでも「碁盤の歌」には創作意欲を刺激されてしまう。

 そんなわけで作ってみた。9文字×9文字のミニチュア版だけれど。
 

へやのかぎをあけた
ん   し   に
ならのきをきるやま
か   よ   に
たなをぎんでつつむ
ち   で   し
のっくしなかったの
た   お   ま
なみをこせばりくち


 タイトル、「鍵をめぐる冒険」。「部屋の鍵をあけた」から始まる、わずか9音の文章8つから導き出されるストーリーを、それぞれでご自由に紡いでみてください。

 それではここまで読んでいただいた方、ちょっとばかり上に視線をお戻しいただけると嬉しいです。私の作った碁盤の歌の上。そうそう、段落の左端。ご注目ください(編集部注・スマホでなく、PCの100%表示でご覧下さい)。言われなくてもとっくに気付いていたというあなたは、アンテナの感度が高い方です。素晴らしい。