細いロープに人間一人の全体重の負荷がかかれば、木製の柵をぐらつかせ、そこに食い込んだ跡を残すこともあるだろう。となると、やけに綺麗に塗り直した白いペンキも、その痕跡を隠すためなのではないかと疑ってしまう。
だが、僕が不動産屋から聞いた情報は「1年前に玄関のドアノブで首吊り」である。ロフトの柵で首を吊ったとは聞いていない。
「大島てる」で調べてみると……
僕は事故物件公示サイト「大島てる」で自分の部屋を探してみた。もしかしたら僕の知らない情報が載っているかもしれない。「大島てる」にはマップ上に火の玉のアイコンが表示されていて、それをクリックするとさらに住所と死因、死亡時期などが表示される。
僕が住んでいる場所に、火の玉はついていた。クリックすると、そこにはこう書かれていた。
「3~5年前、ロフトで首吊り」
つまりこの部屋は、二重の事故物件だったのだ。元々ロフトで首吊りがあった事故物件に住んだ女性が、1年前に玄関のドアノブで首を吊った、ということである。
さて、この事実をどう解釈するか。
「二重の事故物件」に理由はあるのか?
オカルトに結びつけるなら、ロフトで首を吊った前々住人(そのさらに前かもしれないが)の霊に引っ張られて前住人も自殺をしてしまった、となるだろう。しかし、前住人は前々住人が首を吊ったロフトではなく、玄関のドアノブにタオルをかけて首を吊っている。霊に引っ張られるなら、同じ場所で同じ方法で、の方がなんだか納得がいくのだが、実際はそうではない。
ここで気になるのが、僕が不動産屋から聞いた「恋人と喧嘩の末、突発的に自殺」という情報である。何故そんなことがわかるかというと、部屋には遺書が残されていたからだ。さすがに現物は見せてもらえなかったが、そのような内容がおそらく書かれていたのだろう。