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冬でも読みたい「怖い話」

2020/01/07

前入居者は恋人と喧嘩の末、命を絶った

 部屋はとても綺麗だった。7階建マンションの最上階で、ロフトの窓からは大阪市内が一望できた。何の不満もないはずのこの部屋で、前入居者は恋人と喧嘩の末、突発的に命を絶った。

 僕が異変に気づいたのは住み始めて数週間経ったあとだった。この部屋に来てからどうも慢性的な頭痛が治まらない。そのせいもあってか、些細なことでイライラするようになっていた。

心斎橋の商店街。屋根の一部が壊れている

 ある日、華井二等兵という後輩芸人が泊まりに来た。僕はいつも下で寝ているので、華井にはロフトの上で寝てもらった。時おり聞こえる後輩の呻き声のような寝息に少々苛立ちを覚えながらも、その日はなんとか眠りについた。

頭痛薬なしでは生活できなくなった後輩

 翌朝、ロフトで寝ていた華井は頭を抱えながら悶絶していた。酷い頭痛のようだった。この日以降彼は約1ヶ月間、頭痛薬なしでは生活できないほど、頭の痛みに悩まされることになる。

 しかしその代償として、彼は大きなヒントを与えてくれた。

 一つは、この部屋で頭が痛くなるのは僕だけではないということ。しかも個人差がある。

 もう一つは、ロフトの柵の違和感だ。

ロフトへといたる階段

「この柵、一箇所だけ凹んでますよね?」

 彼が指摘した箇所には確かに不自然な凹みがあった。しかもそれだけではない。コの字型に設えられた柵の一辺だけが、止め金で補強されている。

「これ、もしかしてここで吊ってません?」