介護が始まる原因で、最も多いのが「認知症」だ。記憶力や認知能力の低下ばかりでなく、人が変わってしまったようにも感じられるため、介護する側の心身にわたる疲弊のもとにもなりやすい。また、自覚症状の少なさでも知られる。介護予防のためには、周囲がいかに初期段階のうちに気がついてあげられるか。すぐに使えるチェックリストを作成した。
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年末年始やお盆など、長期休暇の際には、実家へ帰省し、高齢の両親と久しぶりに顔を合わせる人も多いだろう。その際、ちょっと注意して親や実家の様子を観察してほしい。帰省は、またとない認知症の“気づき”のチャンスだ。
MCI(軽度認知障害)と呼ばれる認知症予備軍、あるいは認知症の初期段階には、様々な特徴的なサインが現れる。ほかの病気と同じく、認知症もまた早期発見が肝要。早く気づけば医学的な対処はもちろん、その先の人生をより平穏に過ごすための準備に時間を費やすことができる。
だが、認知症の兆候を、本人がそうと自覚できることは少ない。久しぶりに会う子や孫の目だからこそ、おじいちゃん、おばあちゃんに生じた些細な変化に気づきやすいのだ。
その際の「注意すべき変化」をまとめたのが、以下で紹介していく10項目のチェックリストだ。
チェックリストを監修したのは認知症専門医、土岐内科クリニック理事長の長谷川嘉哉氏。『一生使える脳』などの著書があり、年間約300人の患者を診る認知症のオーソリティーだ。
以下、長谷川氏の解説とともに見ていこう。
1 家の中の臭いが気になる。異臭がする
「みなさんそれぞれに、実家の懐かしい匂いがあると思います。ところが、いざ家に上がって、なにか臭うなと思ったら要注意。アルツハイマー型認知症の初期段階では、嗅覚機能が低下することがわかっています。臭う場合は傷んだ食材が残っていたり、ゴミが溜まっているケースが多い。『なんで平気なの?』と聞きたくなりますが、本人は異臭に気づいていない。
あるいは、お風呂に入らなかったり、布団をずっと干さないこともあります。臭いを感じないので、掃除や換気への意識が薄れてしまうのです」
嗅覚機能の低下だけでなく、ゴミが溜まっていることを気にしなくなったり、捨てることが出来なくなっている可能性もある。最近は可燃物、不燃物、カン・ビン、金属ゴミなど、ゴミの捨て方が複雑になっており、分類がきちんと出来ない、あるいは捨てる曜日がわからない。出す日を間違えた時に近所の人から注意され、出せなくなってしまう人も多いという。