突然我が事となる介護。故郷の親が倒れた。でも自分には家族も仕事もある……。途方に暮れている暇はない。介護保険、ケアサービス、お金、見守り― 準備を整え、制度を最大限に活用すれば遠距離介護も十分可能だ。いざというときのための手続きを詳細解説!
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勤務中、携帯電話に入った1本の電話。お母様が倒れました、至急病院にお越しください――。
取るものもとりあえず帰郷し、病院のベッドに横たわる母親と対面。命に別状はないが、後遺症で日常生活に差し支える恐れあり。父親はすでに世を去り、きょうだいは皆遠隔地に住む。さてどうする……。
「親の介護」は、ときに突然始まる。親が遠く離れた故郷に住んでいる場合、ことはより複雑だ。“介護離職”に至った人もいる。
「40歳のとき、岩手に住む認知症の祖母が、がんで余命半年と宣告されました。同じ時期に69歳の母も認知症を発症。母に祖母を任せるわけにもいかず、週末は岩手で介護し、朝6時に東京へ戻って出社する生活を3カ月続けました。でも体力的に辛く、会社に迷惑もかけられないので退社したんです」
そう語るのは、介護経験などを綴ったブログ「40歳からの遠距離介護」を運営する、介護作家の工藤広伸氏だ。
介護が始まる原因で、最も多いのは認知症だ。次いで脳卒中や脳梗塞などの脳血管疾患、高齢による衰弱や転倒・骨折と続く。
介護保険事業状況報告(厚生労働省・2016年度)によると、要介護認定者の数は、第1号被保険者(65歳以上)が619万人。そのうち75歳以上の後期高齢者が544万人と約9割を占める。
介護離職者数も、17年には約9万人に及んでいる。10年前のおよそ倍だ。
しかし、子にも子の生活がある。親の介護のため、職をなげうつ決断ができる人は少数派だろう。では、遠隔地に住む親のために、子ができることは何なのか。どうすれば“遠距離介護”ができるのだろうか。
第1条入院後は「医療ソーシャルワーカー」に相談
NPO法人「パオッコ~離れて暮らす親のケアを考える会~」を運営する介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏が、親が入院した際、子がまずやるべきことについて語る。
「今の病院は入院期間が短く、早い段階で介護の準備が必要です。退院後の生活について、誰が主に介護するのか、費用の負担など、入院中に家族で話し合ってください。大切なのは介護を受ける本人の意思。親がどんな介護を希望するのか、確認しておくべきです」