M-1優勝者とR-1優勝者の違いとは?
ともあれ、先にあげた塙の指摘からは、M-1がいったん終了しながらも復活を果たし、いまなお注目を集め続ける理由がよくわかる。とくに(2)にあるように、スポーツのように見せたことは最大の勝因だろう。4分間は芸人にとっては短いのだろうが、視聴者にとっては集中して観るのに最適な長さではないか。芸人にも視聴者にも漂う緊張感こそ、M-1を「競技漫才」の大会たらしめているといえる。
M-1がスタートしたのがインターネットの普及した時期と重なったのも、その人気に拍車をかけた一因だろう。とくにSNSの登場は大きかったはずだ。これにより視聴者にも参加意識がグッと高まったことは間違いない。私は15年ほど前、M-1を遠方に住む友人とそれぞれテレビで見ながら、電話で感想を言い合っていたが、SNSなら見知らぬ大勢の人たちと一緒に盛り上がることができる。主催者側でも、こうした状況を受けて、敗者復活戦から決勝に進む芸人を決めるのに、視聴者によるネット投票を実施している。
M-1がほかのお笑いのコンテストとくらべて存在感を持つのは、優勝した芸人がほぼ確実に表舞台で活躍しているからでもある。なかには2008年に初出場にして準優勝したオードリーのように、頂点に立たなくても、M-1をきっかけに大きな飛躍を遂げたコンビもあるほどだ。これに対し、同じ吉本主催のコンテストでも、ピン芸人の日本一を決めるR-1ぐらんぷりの優勝者は、全員がいまでも一線で活躍しているとは言いがたい。その理由は、塙が指摘するように、M-1は「複数人による話術の芸を競い合う場」というはっきりした方向性があるのに対し、R-1は「一人芸」という漠然とした括りしかないからでもあるのだろう。相応の基準のもと選ばれた芸人と、基準が漠然としたまま選ばれた