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たとえば勝負の世界を書くにしても、日常から離れることはないと思います――宮下奈都(2)

話題の作家に瀧井朝世さんが90分間みっちりインタビュー 「作家と90分」

2016/05/29

genre : エンタメ, 読書

読者からの質問「高校生のお兄さんたちや、中学生の娘さんは、どんな風に育っているのか教えてほしいです」(40代女性)

 

●三人目のお子さんの妊娠中から小説を書き始められたということですが、執筆の時間と家事などをなさっている時間ははっきり区切っておいでなのでしょうか。たとえば、野菜を刻みながら小説の続きを考える、ということもおありになるのでしょうか。(40代女性)

宮下 だいたい野菜を刻んでいるときは野菜のことだけ考えています。ふとした拍子に小説の続きが浮かぶ場合もありますが、たいていそれはほんとうに「ふとした」ときであり、考えようと思っているときには考えられないみたいです。今やっていることに集中するほうが、楽しく、結局は効率もよいようです。

●宮下さんの著書の主人公たちのごくごく普通でありながら、悩み葛藤してく姿にいつも励まされています。宮下さんご自身ではもやもやしたり、辛いこと(自分や周りに対しても)があったとき、心が落ち着かない時どんなことをしますか?(20代女性)

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宮下 犬を撫でます。うちに犬がいてほんとうによかったです。

●「静かな雨」で文学界新人賞佳作を受賞された頃から注目していました。「静かな雨」の登場人物、こよみさんにしてもそうですが、女性主人公に宮下さんのイメージを重ねてしまいます。今迄の登場人物の中で、誰が一番、ご自身に近いと思われますか?(40代女性)

宮下 ありがとうございます。それでは、こよみさん、ということにしておきます。

●奈都さんの子供とのエピソードや子供との距離感や考え方が大好きです。子供は種であり、どんな種なのかわからないけど軟らかい土に蒔いてやり、水をやり、日に当ててすくすく育つように祈ることぐらいしかできないと書いてありましたが、あれから月日がたち高校生のお兄さんたちや、中学生の娘さんは、どんな風に育っているのか教えてほしいです。(40代女性)

宮下 ありがとうございます。すくすくと、のびのびと育ったようです。いつも機嫌がいいのが特長の3人です。兄妹仲がとてもいいです。

●文学部で哲学を専攻されていたそうですが、小説を書くに当たって、学ばれてきたことは生かされているものなのでしょうか? 心理描写や情景描写を表現する際の美しく紡ぎだされる言葉の数々に、その良い影響が垣間見られると思うのですが、いかがでしょうか?(50代女性)

宮下 表現には哲学は影響していないような気がしますが(哲学の言葉はもっと実践的かつ具体的でなければなりません)、物事を深く考える、疑ってはまた考える、何度もしつこく考える、という考える姿勢みたいなものは、哲学への向き合い方から学んだかもしれません。それは小説を書く上でも大事なことだと思っています。

たとえば勝負の世界を書くにしても、日常から離れることはないと思います――宮下奈都(2)

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