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たとえば勝負の世界を書くにしても、日常から離れることはないと思います――宮下奈都(2)

話題の作家に瀧井朝世さんが90分間みっちりインタビュー 「作家と90分」

2016/05/29

genre : エンタメ, 読書

note

読者からの質問「ピアノのことでお訊きします」(60代女性)

●趣味をおしえてください。また、よく読む作家さんは誰ですか?(10代女性)

宮下 いきなりむずかしい質問です。30分くらい考えました。特筆すべき趣味はひとつも思いつきませんでした。すみません。よく読む作家をひとり挙げるなら、絲山秋子さんです。

●一気に読了、美しすぎる文章に、久々感動の物語に出会いました。原民喜氏の一節がありましたが、好きになる、何か、きっかけがあったのですか? 宮下様が作品を生み出す際、影響を受けた作家、音楽家等、教えていただきたいです。また、音楽をとりまく内容なのに、村上春樹氏のように、曲名が、ほとんどありません。あえて、そうなさったのですか? 以前ヤマハの講師業でしたので、とても気になります。(50代女性)

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宮下 ありがとうございます。原民喜の文章は、以前読んで強く心に残ったものを手帳に書き留めておいたものです。こういう文章を書きたいと思いました。影響を受けた作家というなら、原民喜に限らず、きっとこれまでに読んだすべての作家だと思います。音楽家では、ピアニストのアリシア・デ・ラローチャ。よく聴いているので。作中に曲名を出さないのは、そのほうが自由に音楽が鳴ると思うからです。読んでくださった方の中でそれぞれのピアノが聞こえたらいいなと思います。

 

●ピアノのことでお訊きします。(60代女性)

1)今でもピアノを弾くことはありますか。

宮下 あります。好きなときに好きな曲だけを弾くので、とてもいい気分転換になります。

2)ピアノを弾くとしたら、どんな曲がお好きですか。

宮下 美しくて軽やかで感情移入のしやすい曲が好きです。たとえば、ラ・カンパネラ(弾けません)。

3)ピアノを弾く時、どんなことをイメージしますか。弾きながら、「今、ハンマーのフェルトの部分が弦に当たったな」等を思い描いたりしますか。

宮下 ハンマーや弦のことはほとんど考えません。いや、まったく考えません(笑)。ちゃんと曲のことを考えて弾きます。

●宮下奈都さんの上手な表現が好きです。「ぴんちぴんちちゃんすちゃんすらんらんらん」などの上手い表現はどんなときに思い付くのですか。(10代女性)

宮下 えっ、上手い表現? ありがとうございます。うれしいです。でも、むしろやめたほうがいい表現かもしれません。たとえば「ぴんちぴんちちゃんすちゃんすらんらんらん」をお好きだという方もいらっしゃれば、その表現だけで読むのが嫌になる方もいらっしゃると思います。そうはわかっていても、やめられないのですが。ちなみにいつでも思いついて、書きたいときに書けます。

●今、いちばん楽しみになさっていることはなんでしょうか。お仕事の面、プライベートの面のどちらも教えてくださるとうれしいです。(50代女性)

宮下 仕事では、福井の県立音楽堂で行われる『羊と鋼の森』を題材にしたお話と音楽の会が楽しみです。『羊と鋼の森』を含めた創作についての話を私がして、作中に出てくる「子犬のワルツ」や、書くときにイメージしていた曲などを、素晴らしいピアニストに弾いてもらいます。5月のチケットは完売しましたが、少し形を変えて秋に東京でも行う予定です。

 プライベートでは、うーん、たくさんあります。まずは、間近に迫ったNothing’s Carved In Stone の日比谷野音ライブ。それから、このところ立て込んでしまって読めていなかった本が何冊もあるので、順番に読んでいくのが楽しみです。