メディアで最近よく目にする、「今キテる!」という言葉が怖い。
たまたま興味を持った対象が、「今キテる!」だった時の恐怖は計り知れない。
他人が好きなものではなく、自分が好きなものを。
流行を追うのではなく、流行から逃げるをテーマに、一風変わった失敬な人々が、「今キテない!」を紹介する失敬なエンタテインメント!
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選曲しちゃいましたぁ!
お疲れ様です、番組ADの吉永です。本日はよろしくお願いします。それでは早速、打ち合わせをさせて頂きたいと思います。間もなく本番となりますが、まずは簡単にこの番組「言っとかナイト、知っとかナイト」についてご説明しますね。
この番組は、タレントのチーン平太がメインMCを務める2時間生放送のノンストップバラエティラジオです。ノンストップって言ってもCMは挟みますよ。スポンサーさんのお陰で番組が成り立ってるもんで、そればっかりはごめんなさい。勘弁してください。
アシスタントの福良はぎちゃんは、なんとGカップ。今旬の巨乳グラビアアイドルです。デカイのはおっぱいだけじゃなくて態度も……っておい! それは言っちゃダメ……ごめんなさい、取り乱しました。
今回ご登場頂くのは、ゲストにご当地グルメを食べて頂きながら、ゆったりまったりとしたトークを展開していくコーナー、「腹が減っては話ができぬ」になります。基本はこのフォーマットに沿ってトークを展開していきますが、アドリブ大歓迎です。話が脱線してしまっても、そこは百戦錬磨のチーンにおまかせください。
まずは簡単な自己紹介からお願いします。変わったお名前ですが、本名なんですか?
ですよね……これが本名だったらキラキラネームどころかギラギラネームですよね。あっ、今のコレ使ってもらっても大丈夫ですよ。つかみとしてはかなりイケるはずです。是非是非!
ちなみに私の下の名前なんですけど……そうなんです……さゆりなんです。これどう思います? 両親完全にやっちゃいましたよね。とんでもない十字架背負わされたわ。重くて重くて、どうりで肩が凝るわけだ……ってもうええわー。私、ついついこうなっちゃうんですよ。話を戻しますね。グイッ。
続きまして、挨拶代わりに1曲かけさせて頂きますが、曲は僭越ながら……私の方で選曲させて頂きましたぁ。何がかかるかは、お楽しみ……ということで。これでしっかりとリスナーを自分の世界観に引き込んで頂いて、その後で、いよいよお待ちかねの「コーナー」です。
今回食べて頂くのは、そう、ここ浜松が産んだ奇跡、乾パンになります。懐かしいですよね? なんか避難訓練思い出しません? 「おかし」が「お菓子」じゃなかった時のあのガッカリ感。
ちなみに、私がラジオ番組に携わるうえで大事にしている「おかし」は、「押さない」「噛まない」「尺とらない」です。大人になっても「おかし」を大事にしている自分が、嫌いじゃないんです。
おいおい、押さないも尺とらないも同じ意味じゃないか、という突っ込みは心にしまってくださいね。何せ、私はまだADなんですから。
ところで、乾パンに対して特別な思い入れや思い出はありますか? 出来れば乾パンにまつわる恋愛話等を聞かせて頂けたら、リスナーとの距離もグッと縮まるはずです。
ちなみにどうですか? 何かありますか?
あぁ……じゃあ……すぐに出てこなければ本番までに思い出しておいてください。まだ時間はありますから。急に振られても対応出来ませんよね。いくらミュージシャンとして、普段から表舞台に立っていても、常にスイッチを入れている訳ではないですよね……。その事を理解出来ていなかった私に非があります。どうぞ、お気になさらずに。気にしていてもしょうがないですから。前を向いて進みましょう。やってしまった事は仕方ないんですから。切り替えましょう。
実際に乾パンを食べながらのトークを終えたら、はい、お待ちかねの告知をチーンと福良の方からさせて頂きます。そしてお別れにもう1曲かけさせて頂いて終了となります。こちらも、大変僭越ながら私の方で選曲させて頂いてましたぁ。実は私……
ファンなんです!
なんなんでしょうか、この人は。もう、ラジオに出るのが怖いです。当然のように、この後の本番はボロボロでした。
大阪府 27歳 ミュージシャン 細川フトシ
こんな打ち合わせをしていたら、それだけで疲れてしまいますね。打ち合わせをしながら、半分以上は吉永さんの自己紹介。図々しさもここまでくれば大したものです。突っ込みどころ満載なんだけど、しっかり最後に自分で回収してるから、何も言えないのが悔しいですね。実に失敬です。
そして、乾パンについて質問した後、明らかに、機嫌が悪くなりましたよね。あれ、事前に事細かく聞いて何になるんでしょうか。本番でもう一度同じ事を話す方の身にもなって欲しいですよね。なんでADって、本番で話す内容を打ち合わせで一度吐き出させるんでしょうか。乾パンにまつわる恋愛話なんか、無いでしょう。なんだか腹が立ってきました。
いやぁ、今回は非常に共感します。何故なら、実は昔……
ミュージシャンだったんです!
「失敬エンタテインメント!」編集部