メディアで最近よく目にする、「今キテる!」という言葉が怖い。

 たまたま興味を持った対象が、「今キテる!」だった時の恐怖は計り知れない。

 他人が好きなものではなく、自分が好きなものを。

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 流行を追うのではなく、流行から逃げるをテーマに、一風変わった失敬な人々が、「今キテない!」を紹介する失敬なエンタテインメント!

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震えるな!

 この連載が始まった当初、燃えていました。意味のわからない人物や、物語を書いていると、誰も追いつけない所に行けるような気がして、ドキドキしました。ただ、誰も追いつけないというのは、それはそれで虚しい。気がついたら誰も後を追っていなくて、それに気付かずにひたすら走り続けていたということに絶望したんです。あまりにも反応がない。あると言えばあるのですが、どれも、「あれは一体何?」といった、根底からの問いかけばかりです。それを言われちゃお終いだ。でも、確かに意味がわからない。自分でもやり過ぎだと思う。

 そうだ、しまいだ。もう、しまおう。そうと決まればしまい方だ。そこさえ間違わなければ大丈夫。前にやっていた1分書評、あれは評判良かったじゃないか。あれやろうよ。またあれをやろう。1分書評を再開しよう。再開したいです。最初から素直にあれをやっておけば良かったな。

 編集部の皆さん、どうでしょうか?

東京都 32歳 尾崎世界観

 

 これから寂しくなりますが、そんな気持ちで書き続けても何も生まれないでしょうね。確かに、前回辺りから苦しそうな気配は伝わっていました。でも、そこを乗り越えてくれると信じていましたよ。何が「絶望したんです」だ。そんな奴が、「『じゃあ俺は、尾崎世界観に対抗して〇〇〇〇観にしようかなぁ』」っていうあの寒い大喜利、死ね」って腹を立てたりしていると思うと、寂しくて震えます。そう、寂しくて震えるんです。シンプルに。

 まだ半年程度のお付き合いですが、失望しました。絶望には失望で対抗しますよ。愛には愛でなんて、あんなのは間違ってます。あなたの未来を楽しみにしていたのに。そんな奴に、「iPhoneで、絶望って打つたびに絶望要塞って最初に出てくるの鬱陶しいなぁ。そっちの方が言葉として強いだけになおさら」って憤る資格なんて無いんです。資格と言えば、四角。あなた、今回のは三角ですよ。マルでもバツでもなく、サンカク。中途半端で実に恥ずかしいです。

 ただ、今ならまだ引き返せる状態ではあります。この前、舞台を観に行って、冒頭で「今から私が合図をしたら目を閉じてください。次に目を開けた瞬間から物語が始まります」という大事な導入部分に逆らって、ずっと目を開けてたでしょ。これは、素直に指示に従って目を閉じることが出来ない天邪鬼な人間に対するフリかもしれない、きっとそんな人間に対する面白い展開が用意されているに違いない。気鋭の劇団だからその可能性は高い。そんな考えも虚しく、目の前ではただセットチェンジが繰り広げられていましたよね? だから、余計なことを考えるな。ブレるな。

 震えるな!

 あなたに伝えたいのはそれだけです。

「失敬エンタテインメント!」編集部

©神藤 剛