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 巨大な電球と言っても、スーパーカミオカンデに据え付けられているのは光電子増倍管と呼ばれ、普通の電球が電気を光に換えるのに対して、光電子増倍管は光を電気に換える。

 宇宙線は水と反応してチェレンコフ光と呼ばれる微弱な光を出すが、これを検出するのが光電子増倍管の役割だ。四方八方から飛び込んでくるエネルギーの高い宇宙線を岩石でブロックするため、山の中に設置されている。

水を抜かれたスーパーカミオカンデのタンク内部 ©︎時事通信社

 スーパーカミオカンデが狙うのはもっぱらニュートリノと呼ばれる素粒子だ。幽霊粒子とも呼ばれるこの粒子は、他の物質とほとんど反応しない。われわれの体はもちろん、地球すら簡単に貫通する。しかしまれに反応することがある。そこで巨大タンクで、いわば大きく網を張って、感度の高い検出器で、ニュートリノ反応の痕跡を捉えようというのである。

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 同じ神岡鉱山の別の場所に設置されていたスーパーカミオカンデの前身であるカミオカンデは、1987年に地球から16万光年離れた大マゼラン星雲で起きた超新星爆発で生じたニュートリノを検出している。この功績で、戸塚氏の師である小柴昌俊氏が2002年のノーベル物理学賞を受賞した。私と立花氏がスーパーカミオカンデを訪ねたのは、この受賞が決定する少し前だった。

物理学者の矜持を感じた戸塚氏の“ことば”

 さて、どういう話の流れで、戸塚氏が生物学に疑問を呈し、科学を名乗るに値しないといった内容の発言をしたのか今となっては正確には思い出せない。生物学の対象となる細胞なり、動物なりを観察する過程において、どうせ個体差を調べてもその由来は解明できないからと、個体差を無視あるいは軽視する姿勢に不満を持っているようだった。

戸塚氏は文化勲章も受章した ©︎時事通信社

 ニュートリノにも種類が幾つかあり、それぞれの「個体差」を小数点以下に0がいくつも続く精度で観測し、そのデータを何年も蓄積することで、質量なしとみなされていた従来の理論を覆したのが戸塚氏や、共同研究者で、この業績により2015年のノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏らである。

 一口に生物学と言っても様々なので、筆者自身は、生物学が科学ではないというのはさすがに言いすぎだと思う。しかし、素粒子物理の最先端で、超高精度の観測実験をしている物理学者の目には、生物学すら科学に見えないのかと、戸塚氏の発言に物理学者の矜持を感じた。