文春オンライン

『ストレンジャー・シングス』は何位? Netflix視聴数ランキングと批評サイトの“乖離”が意味するもの

【配信系入門編】年末年始に観たい「2019年の海外ドラマ&映画」

note

『マーダー・ミステリー』はジェニファー・アニストンとアダム・サンドラーという90年代から幅広い世代に人気の2人がダブル主演。配信後3日間(金土日の週末)の視聴数は何と全世界で約3086万アカウント(内56%は北米以外のアカウント)!

 アガサ・クリスティーのようなサスペンスを繰り広げながらコメディ、アクションも盛り込まれた、お茶の間で見やすい約1時間半の映画で、日本人俳優の忽那汐里さんも出演している。日本で言うところの「金曜ロードSHOW!で放送してたら何となくついつい観てしまう」気軽さがあり、週末に観るにはちょうどいいからこそ、視聴数の多さを誇っている。

「SNSで人気が出ている作品」として特徴的なのは、5位の『パーフェクト・デート』。日本での知名度はないが、昨年Netflix映画『好きだった君へのラブレター』で、一躍SNSの話題をさらった俳優ノア・センティネオ主演最新作だ。SNSで大人気となり、その後雑誌や人気トーク番組に出演したセンティネオは今や最も勢いのある若手俳優の一人。この作品の看板俳優は彼一人であることを考えると、それでも5位に入る人気っぷりから、彼のファンの多さが窺える。Netflixでブレイクすることは、アメリカだけに留まらず、全世界一斉配信を活かした世界規模での人気に直結するため、新しいスター輩出の方法の一つにもなっている。

ADVERTISEMENT

批評家さえ「観る価値がある作品すべて」は追えない

 Netflix視聴数ランキングだけでも、充分気になる作品があるが、それでもやはり作品選びにはまだまだ迷うことも多い。現在アメリカでは、2019年テレビシリーズ年間ベスト10を各メディアが発表している時期だが、記事の冒頭で「誰も観る価値がある作品すべてを追うことは出来ない」(「Vulture」)、「ごめん、その作品観てないんだ……ということを社会的に認めるともっと過ごしやすくなる」(「IndieWire」)と書くメディアも登場する程に、批評家さえも作品が多すぎることをジョークを交えながらも指摘している。アメリカではピークTV時代と呼ばれ、今年上半期に製作されたドラマは2012年の年間製作数を上回っているそうだ。ドラマだけでなく、アニメやドキュメンタリー、リアリティ番組、バラエティ番組など、その種類は多岐にわたる。

©iStock.com

 プロでさえ良質な作品すべてに追いつくことが難しくなっている中で、一般視聴者は動画配信サービスからのオススメ以外でどのように面白い作品に出会えばよいだろうか。簡単な手法は、日本でも各メディアやSNSで、年間ベスト10が数多く発表されるため、そこで見かけた作品から視聴すること。その中で自分と好みが合う映画やドラマのジャーナリストやライターがいれば、そのままSNSでフォローすると良い。

 また、プロのライターでなくとも、SNSでは、年間で映画100本以上、ドラマは50シーズン以上観ている筋金入りのファンのアカウントも多く存在している。そういったファンのアカウントをフォローすると、動画配信サービスからのオススメだけではわからない、熱量のこもった口コミに触れることができ、観てみようかなと思える作品がどんどん増える。飲食店の口コミと同じで、やはり観た人達の生の声は非常に大事だ。システム上でオススメされるよりも、誰かの熱い感想には、まだまだ強く興味をそそられるものがある。そこで最後は、ピークTVと呼ばれ、作品が溢れている中でも、観た人達の熱い声もあり安定の人気を誇っている作品を、年末年始に観たい「2019年の海外ドラマ&映画」配信系入門編として紹介したい。