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2020/01/19

genre : ニュース, 社会

夜間飛行、木の枝すれすれ飛行、緊急操作……

「夜間飛行もそうですし、地形を縫うような飛行も訓練します。戦闘を想定した時、敵の監視やレーダーで発見されないように隠れて飛ばないといけません。ですから、山の間の木の枝すれすれを飛んだりすることも必要なんです。

 もちろんこれも訓練をするのですが、基本的に航空法では一定の高度以上で飛ぶことになっています。そこで、民家などのないエリアを訓練地域として設定し、日々訓練飛行をしています」

 

「あとは緊急時対応もあります。ヘリに不具合が発生したケースを想定して、緊急操作を訓練します。簡単に言いますと、アクセルを踏むとクルマが前に進むように、ヘリも出力を上げると揚力を得て飛ぶわけです。でも、クルマはニュートラルにしても大丈夫ですがヘリは揚力を得られなくなったら飛べなくなります。そこで、あえて出力を下げて安全に着陸する訓練をする。正直、ミスをしたら危ないです。でも、そうした状況でも我々は被害を出すことなく安全に着陸させる必要があります。訓練はさまざまな場面を想定して、というのが基本です」

最も難しいのは「ホバリング」

 このような訓練を通じて高い技量を身に着けていくのだが、吉田さんが“特に難しい”と話すのが、ヘリを空中に停止させるホバリング。ホイスト装置を用いる物資輸送や人命救助をするときには欠かせない技術だ。

 

「ヘリの操縦の中で最も難しいのがホバリングだと認識しています。ピタリと空中に停まって動かさないというのは、風の影響もあるのでかなり難しい。ヘリの機種によってはオートホバー、つまり自動でホバリングしてくれるタイプもあるのですが、私たちの乗っているUH-1Jでは自分の技術でやらないといけません。

 ポイントとしては、その時の重量重心や風向き、風の強さを頭に入れて、一番安定しやすい方向を定めてそこに停止する。風は絶えず変化するものですから、強風が吹いてから対応していたらもう遅い。次にどういう事態が生じうるか、すべての可能性を想定して判断して操作しないと。コクピットの中にいますが、それでも風を体で感じるんですよね。これはもう……言葉ではなかなか伝わらないでしょうし、経験しないと身につかないものですね」

2015年の鬼怒川決壊の際、濁流にのまれた住宅から、自衛隊のヘリに救助される人。強風が吹くなかで「ホバリング」を行い、機体を安定させている ©時事通信社