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自衛隊の本来任務は「国防か、災害派遣か」ヘリパイロットが明かす想い――「消防や警察にも負けない」

陸上自衛隊航空操縦士 インタビュー#2

2020/01/19

genre : ニュース, 社会

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なぜ自衛隊のヘリパイロットになったのか?

 こう話す吉田さんは操縦士としてのキャリアは11年に及ぶベテランパイロットだ。中学校を卒業後に自衛隊に入隊し、横須賀の少年工科学校(現在は高等工科学校)を卒業後に航空科職種に進んだ。2006年には宇都宮市にある陸上自衛隊航空学校に入校して操縦士の国家資格を取得、三重県の第10師団第10飛行隊に配属されて、以来ヘリのパイロットとして活躍してきた。

 

「熊本県の出身で、近くに自衛隊の駐屯地があってヘリが飛んでいるのをよく見ていたんです。小さい頃から憧れみたいなものがあったんですよね。それで中学を卒業する時に、普通に高校に進学するのもおもしろくないなと。おじさんが自衛官だったこともあって、自衛隊に入ることにしたんです。あの当時の少年工科学校は1学年で300名ほどで、自衛隊員としての訓練に加えて通信制を利用して高校卒業の資格も取れるんです。ほんと、中学を出たばかりの世の中を知らない連中が集まって、楽しいところでしたね(笑)」

11年のキャリア――ヘリのパイロットに必要なものは?

 第10飛行隊で操縦士として7年間空を飛び、明野駐屯地の航空学校では3年間パイロットの教官も務めた。そして2019年3月に立川駐屯地の第1飛行隊へ。東日本大震災をはじめ、災害派遣でも幾度となく出動した経験を持つ。そうした経験豊富な吉田さんが思う“ヘリのパイロットに必要なもの”とは何なのか。

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「資質と技術の2つが必要だと思います。資質というのは、やはり使命感や責任感ですよね。ヘリはある程度のリスクを負って飛んでいるので、その中での全責任をパイロットが負ってます。ですから、責任感がないものは操縦士にしてはならない。

 加えて、柔軟性も大切です。空中では本当にいろんなことが起きるんです。東日本大震災の時もそうでしたが、狭い空域に沢山のヘリが飛んでいることもあります。更に天候の変化もあるし、ヘリそのものも毎日同じ状態ではなくて日々調子が変化するもの。そういう様々な要素を踏まえて柔軟に対応していく能力が求められるのかなと、思っています」

 

「やはり私たちの任務は判断の連続なんですよね。ただ空を飛んでいるだけではなくて、時間や燃料などあらゆることを判断し続けながら飛ぶんです。そしてその判断のひとつひとつが命に関わることもある。ですから、なんのために飛んでいるのかという目的意識を持って、不測の事態にも対応できる判断力を身に付けて、そしてそれを実行できるだけの操縦の技術を練成する。

 私たちの任務は、国民の皆様の生命を守ること。ですから、操縦をミスして墜落するようなことがあっては本末転倒なのです。守るべきものを守れないのでは、そもそも意味をなさない。だから技術はもちろんですが、資質の部分も持っていなければヘリの操縦士としてはダメなのかなと思っています」