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安倍政権の本質は「せこさ」

鹿島 安倍政権の本質って何だろうと考えた時に、一般紙はいろいろ硬い言葉で説明するんですけれども、「やっぱり、上級国民の特権があるんじゃないの?」というスタンスがすごくスポーツ新聞に合っているし、それが本質かもしれないと思うんですよ。

地獄耳 第一次安倍内閣ができたての頃から、自分の近しい人を周りに集めた「お友達内閣」と呼ばれていましたよね。それがとうとう憲政史上最長の長期政権になると、「桜を見る会」に呼ばれる人と呼ばれない人が出てきた。「誰がこの人呼んだの?」という入っちゃいけないような人まで呼ばれていた。お友達を選ぶだけじゃなくて、まるで国民を敵と味方に分けようとする安倍政治の本質を、国民はマスコミよりもずっと明確に見抜いていたからこそ、「上級国民」という言葉が生まれたんじゃないかと思うんです。

2019年4月、「桜を見る会」での安倍晋三首相 ©ロイター/AFLO

鹿島 僕がなるほどなと思ったのは、来年度の「桜を見る会」中止が発表された3日後、地獄耳師匠は安倍政権のやり方をただ一言、「せこい」って書いたじゃないですか。

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《昨年の桜を見る会からその異常性が発揮されたという指摘がある。「自民党総裁選挙で3選がかかっていた首相は桜を見る会で大盤振る舞いをすることで支持者の取り込みを図った」というのだ。地方議員や地元の後援会を連れていくことで票固めとは税金を使った一見合法的なようなせこいやり方。総裁選挙は選挙法に触れずやり放題なところを利用したのだろうが、その総裁が自動的に首相になると思うと随分とお手軽な手法で首相の座を手に入れた薄っぺらい話になってくる。自民党は首相を守り切れるのか。逃げ切る策は尽きたようにも見えるが。》(11月16日)

地獄耳 そう、巨悪じゃないんです。つまり、「権力の行使」と言うと絶対的なものすごいパワーだと感じるけど、そうじゃない。ちっちゃなところで権力を使うんです。そうすると、すごいせこい感じがしちゃって。何か困った時には「これは民主党政権でもやってました」と言い逃れに使うところも、せこさです。

鹿島 「ああ、なんて的確な表現」と思いました。安倍政権の本質は「せこさ」って、これも一般紙では書けない。

地獄耳 確かに、「上級国民」や「せこさ」なんていう言葉は、一般紙の政治面では絶対に生まれないですよね。なぜなら、我が国は三権分立の民主国家で、選別はあり得ないし、なくさなきゃいけないと大真面目に書いているから。でも実際に社会で生きていれば、いろんな権力とか、「何でこんなことがまかり通るんだろう」という壁にぶち当たるわけです。

 まだまだ「桜を見る会」問題が終わらないのは、やっぱりその直前に「身の丈」発言が飛び出したからに他ならないんですよ。全部つながっているんです。「そう簡単に子どもたちの将来を、政治家の舌先三寸で変えないで」と思う親御さんたち全員を敵に回してしまいました。経済力や地域格差をさらっと「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」って、これはものすごい選民意識に基づいた言葉ですよ。

鹿島 そしたら、桜が弾けました。呼ばれた人、呼ばれない人。

地獄耳 選ぶか、選ばないか。あるいは安倍さん側かそうじゃないか。そういう選民意識に明け暮れた1年だったと思うんですよね。

 

鹿島 安倍首相が、立憲民主党の杉尾(秀哉)議員に「共産党」とヤジを飛ばして……「桜を見る会」問題はあの後に起きたんですもんね。「あれ、もしかして何か予期していた発言だったのかな」と思っちゃうくらい。

地獄耳 もしかしたら、図らずも出ちゃったのかもしれません。それはともかく、あれでスイッチは入りましたよね。でも、昔はロッキードにリクルート、東京佐川急便といった大事件では、野党の中にどこからともなくペーパーを手に入れてくる「爆弾男」が何人もいました。いろんな階層の人たちとネットワークを持っている怪しげな人がね。

鹿島 今回は“仕掛け人”の共産党・田村智子議員が目立っていて、それを野党みんなが「俺たちの手柄」みたいな感じでアピールしてますね。

地獄耳 それが野党統一の拍車になるなら結構なんですけどね。今の野党にスマートな議員はたくさんいるけれども、正直頭でっかちな印象は否めません。

鹿島 そんなとき、実際に会えば会うほど、半径5メートル以内の人を虜にしちゃう昭和自民党的な国会議員がまだいるとしたら、そちらの伝統のほうが勝っちゃいそうです。

地獄耳 私みたいにほとんどを褒めないで、噛みついてきた者からしても、自由民主党という政党自体がもっと大人の政党だったなと思いますね。五大派閥の弊害とかいろんなことを言われましたが、そこで1年生、2年生、3年生を教育し、徹底的に保守政治家として、与党政治家としての教育をやったものです。

結婚&初入閣 進次郎節が消えた

鹿島 長らく自民党のプリンスと呼ばれ、2019年は結婚と初入閣を果たした小泉進次郎さんについてはどうですか?

地獄耳 環境大臣になって一番もったいないのは、進次郎節が消えたことですよ。小泉さんのいいところは、お父さんと同じで自民党批判をするところ。それが党内の人からも喜ばれていたわけでしょう。ところが、今では環境省の言いなりになっちゃった。

鹿島 「ネット圏外」でふわっとした民意を掴むのは抜群だった小泉さんも、環境大臣に就任して早々に「セクシー」発言や「小泉ポエム」が飛び出して、本当はどういう人か、可視化され始めてしまいましたね。

小泉進次郎衆院議員と滝川クリステル ©時事通信社

地獄耳 最初にガツンとやられて慎重になっているのかもしれませんが、もし進次郎節が封印されるなら、もう魅力はなくて普通の人になっちゃうわけです。

鹿島 進次郎さんって、2~3日寝かせてから一番おいしいところで、今まで出ていない意見を言うところがありますよね。

地獄耳 そうなんですよ。政治家としては、ちょっとずるいところです。質問された時、瞬発的に大臣としてのコメントを出せないとやっぱりダメなんです。昔からロングインタビューを受けていないし、政策を語り切るまでの力がなかった。農政、震災復興、環境とやってきたけれど……。

鹿島 もうバレちゃったら、SNSでガンガン発信したらいいんじゃないかと思うんですけどね。いっそ妻の滝川クリステルさんのほうが政治家へ転身するということは……。

地獄耳 専門外だからよく分からないですけど、河井案里さんにならないでほしいと願うばかりですね。