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体力のピークまで続けられない女子相撲を取り巻く環境

 ドキュメンタリーの最中、理学療法士の方にマッサージを受ける今さんのシーンがある。そこで今さんは、「女子相撲のピークは20歳と言われるが、男性の大相撲を見たら30歳を超えてもできてる人いるし」という話をする。それを聞いた理学療法士の方の返答は、「体力的なピークは女性の場合は医学的には多分25〜26くらいやと思うね」というもの。

 今さんが周囲に聞かされたピークとは5、6歳も差がある。その理由は一体何故なのだろう。

第6回全国学生女子相撲選手権の個人戦・重量級で、朝日大の紅谷樹里(左)を寄り立てる立命大の今日和 ©時事通信社

 理学療法士の方いわく、「女子は環境が整っていないから学生の間だけでっていうところがあると思う(から20歳がピークと言われるのでは)」ということらしい。つまり、体力のピークのせいでなく今の女子相撲を取り巻く環境のせいで、女子相撲の多くの選手は医学的に体力のピークとされている25、6歳まで相撲を続けることが困難だということだ。なんてことだ、と私は思った。

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 人生に一度くる体力的なピーク、その時にその競技を続けていたいスポーツ選手はたくさんいるだろう。その人の人生で一番の結果が出せる大きなチャンスかもしれない。そんなスポーツを極める人なら当然に持つ夢に、挑戦することさえも困難な女子相撲。

「伝統」や「マナー」とは一体なんなのだろうか

 私の活動とジャンルは違えど、目指すものはとても近いもののように思える。男性がプロの相撲に挑戦できるのならば女性も、男性がフラットシューズを履いて仕事をできるのならば女性も。こんな、「じゃあこれからはそうしましょう!」の一言があればすぐに解決に向かうことで、何故私たちはこんなにも闘わなければならないのだろう。

「困っている人がいるなら制度を見直さないとね」という、全然難しくない小学生でも分かるはずの話なのだが、いまだに女性が相撲でプロになる道はないし履きたくない人にヒールのあるパンプスを女性のみに義務付けられる職場もなくならない。

 誰かの尊厳や人権、健康を害してまで守っていかなければならない「伝統」や「マナー」とは一体なんなのだろうか。