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「一人勝ち」のトヨタだが……

 業績が安定しているトヨタも決して安泰ではない。25年近くトヨタを取材してきた筆者が見ても、いまのトヨタは決して強いとは言えない。その理由は、トヨタの強みの一つは、部品を供給するグループ企業や下請け企業の強さであったが、それが崩れているからだ。トヨタが儲かれば、グループ企業や下請けも儲かる「共存共栄」できた構図が大きく崩れようとしている。

 たとえば、トヨタグループ大手8社の2019年4~9月期の決算では、デンソー、アイシン精機、ジェイテクト、トヨタ紡織の4社が営業減益となった。大手8社より規模が小さいトヨタ系中堅7社の決算でも、東海理化、愛三工業、大豊工業、ファインシンターの4社が営業減益。トヨタ本体は儲かっているのに、下請けは業績が悪化している。

©iStock.com

 こうした現状について、大手部品メーカーの幹部はこう語る。

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「中国市場の減速も響いているが、トヨタからのコスト削減要求が厳しくなっている上、部品メーカーも自動運転や電動化など次世代技術への投資負担が高まっており、収益が出にくくなっている」

 別のトヨタ系部品メーカーの役員はさらに手厳しい。

「トヨタからの値引き要請が厳しくなった。クルマのモデルチェンジに合わせて納入価格が一気に30%下げられることもあり、これではとても経営が成り立たない。共存共栄ではなく搾取の構造になりつつある」

「トヨタ一人勝ち」の現状に対して、「身内」から不満の声が出ているのだ。トヨタが仕掛けるグループ再編に対しても不満がくすぶる。

トヨタ自動車・豊田章男社長 ©AFLO

 こうした気配をトヨタも察してか、虚礼廃止や負担軽減の大義名分の下、毎年2~3月にかけてトヨタに納入する部品メーカーの集まり「協豊会」総会、設備メーカーの集まり「栄豊会」総会、グローバル仕入先総会がそれぞれ開催されていたが、今年からは3総会を1本化することにした。トヨタは年始に開かれていた取引先との賀詞交歓会までも止める。

 トヨタグループに限らず、世界を見渡しても、これまでサプライチェーンの頂点にあった完成車メーカーと、部品メーカーの関係が大きく変化しようとしている。その先鞭をつけたのがドイツだった――。

出典:「文藝春秋」1月号

「文藝春秋」1月号および「文藝春秋 電子版」掲載の「トヨタvs米独連合〈新世界自動車戦争〉の勝者は?」では、いち早く完成車メーカーと部品メーカーとの関係性を「改革」してきたフォルクスワーゲンをはじめとしたドイツの事例について紹介し、トヨタやホンダなど日本メーカーが持つべき、未来を見据えた「戦略」についてレポートしている。

文藝春秋

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新世界自動車戦争 トヨタvs米独連合の勝者は?