ホンダの“伏魔殿”とは
実は日本の自動車メーカーで、ガバナンス体制に問題があるのは日産だけではない。ホンダも同様である。
2019年10月に開催された東京モーターショーでは、ホンダは同社を代表する小型車「フィット」の新型車を発表したものの、ブレーキに関する品質問題が解決できないために発売を4カ月も延期した。2013年9月に発売した前モデルも販売開始から1年間に5回の大規模リコールを頻発し、それが引き金となって、前社長の伊東孝紳氏が退任に追い込まれた。こうして品質問題が多発するのも組織や仕事の仕方に課題があるからだ。
ホンダの2019年4~9月の中間決算は、売上高が前年同期比1.8%減の7兆7253億円で、本業でのもうけを示す営業利益が8%減の4726億円の減収減益だった。
ホンダの事業で最も売上高の多い四輪は5兆2810億円、営業利益は1952億円で営業利益率は4%。これに対して二輪は売上高1兆555億円、営業利益1476億円で、営業利益率は14%だ。
この構造から言えることは、売上高で二輪の約5倍の四輪の営業利益は、二輪の1.3倍しかなく、四輪は二輪に食わせてもらっている状況なのだ。
主力の四輪は低調ながら「金食い虫」である。2019年度のホンダの研究開発費は8600億円のうち「8割程度が四輪向け」(ホンダ幹部)とされる。インターネットとつながるコネクテッドカー(C)、自動運転(オートノマス=A)、ライドシェアやカーシェア(S)、電気自動車(EV)などの電動化(E)といった、いわゆる「CASE領域」に莫大な投資が必要となっているからだ。
ホンダ元役員が語る。
「ホンダの研究開発部門は聖域化され、伏魔殿化している。社外取締役がこうした問題をもっと指摘すべきだが、何もやっていないようだ」