「彼らのゴッドファーザーに相当する盧武鉉の自殺(2009年)は、現在の文在寅政権につながる韓国の左翼革新勢力にとって歴史的トラウマになっている。韓国風にいえば『ハン(恨)』である」

 史上最悪の状態が続く日韓関係。昨年から引き続き、元徴用工の補償問題をはじめ二国間の課題は山積している。2020年、文在寅大統領の対日姿勢は変化するのか。

 韓国特有の「ハン」という表現で、文大統領の行動原理を分析するのは、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏だ。30年以上のソウル駐在経験を持つ黒田氏が「週刊文春デジタル」への特別寄稿で明かしたのは、盧武鉉大統領の自死というトラウマに縛られる文在寅政権の姿だ。

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文在寅大統領 ©AFLO

"挫折"しても路線変更できない理由

 黒田氏によれば、「ハン」とは「他者に対する恨みつらみもさることながら、それ以上に自らの希望、期待、願い、理想、あるべき姿が実現しなかったことからくる、やるせない鬱憤を意味する」。

 文大統領は2019年、後継者に考えていた曺国(チョ・グク)前法相が世論の猛反発を受けて辞任を余儀なくされた件や、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を米国の圧力で回避せざるを得なかった問題などで"挫折"を味わった。一部ではその経緯から、2020年は「現実主義」に移行し、外交でも「対日接近」に期待する見方もある。