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軍事的緊張、戦略的傍観、そして不安と無関心

 庶民の認識はさておき、中国の為政者たちが昨今の朝鮮半島情勢を非常に注視しているのは確かである。中国人民解放軍は北朝鮮国境に10万人規模が展開中とも報じられ、兵士への「動けば撃つ」といった戦時朝鮮語の教育もおこなわれていると伝わる。 

 ただ、北朝鮮に戦火が上がったところで、中国が単独で北朝鮮軍と戦う可能性はほとんどなく、まずは難民流入の阻止が表立った仕事となる。アメリカのトランプ政権が習近平に協力を求める姿勢を見せたことで、中国にとって昨今の朝鮮半島情勢は、むしろ自国の国際政治上の影響力をよりアピールする好機という側面すら生まれている。米日韓の軍事データの収集など、中国にとって今後やるべきことは多いのだが、事態がどう転んでも中国自身が不利になる可能性は(短期的に見れば)それほど高くない。

 政府がこうした立ち位置であるため、中国国内の報道においても、北朝鮮問題は危機を報じつつもどこか「他人事」という雰囲気が演出されているように見える。

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豆満江沿岸の中朝国境 ©安田峰俊

 もちろん、遼寧省など北朝鮮と近い地域の人々には、朝鮮半島からの難民流入によるパニックや、核爆発による環境汚染を心配する声も出ている。ただ、これらは台風や洪水の懸念と同じような地域限定の不安にとどまり、全国的に見れば庶民の間でほとんど緊張感は高まっていない。

 少し危ないので官民を上げて大慌ての日本、いちばん危ないのに慌てていない韓国、危険がなくて関心もない中国の庶民と、虎視眈々とチャンスを狙う中国政府――。東アジアの各国がそんな状態にあるなかで、現在の朝鮮半島危機は今日も深刻さの度合いを増している。