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一人称は「ぼく」、キャッチコピーは「半分少年・半分少女」……野宮真貴が語る、売れなかったあの頃

渋谷系歌姫、還暦になる。 #2

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CMソングの仕事で本領発揮

 そんな窮状を救ったのは、慶一さんからのCMソングのお仕事でした。新人なのでギャラも高くないし、いろいろ対応ができるCM向きの声だったのか仕事が入るようになって。バンド活動の傍らそれで暮らしてました(笑)。

 CMソングはトータルで100曲ぐらいはやってると思います。有名なものでいうと、プチダノンのシリーズ。「あったまばっかりでも かっらだばっかりでも だめよね♪」。あれは私の声なんです。実はデビュー前にもCMソングはやっていたことがあって、初のお仕事は、牛丼の吉野家のCMでした。四人囃子やプラスチックスのメンバーだったプロデューサーの佐久間正英さんからの依頼で、「チカちゃんみたいに歌って」と言われたので張り切りました(笑)。吉野家が大幅リニューアルをした後だったので、「リフレッシュ!吉野家」というフレーズだったことをよく覚えています。

 ただ、私は音楽の勉強をしていないので、楽譜が読めない。お仕事で呼ばれて譜面を渡されても初見で歌えないんです。なので、作曲家の方に、「1回だけピアノで弾いてもらえますか?」と頼んで弾いてもらって覚えて歌う。だから、覚えるのはすごく早い。というか、早くなった。鍛えられました。だって、必死ですから。仕事がなくなっちゃうから(笑)。

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沢田研二とのデュエット曲「ウィークエンド・サンバ」は『JULIE SONG CALENDER』に収録。1983年にカセッアルバムとしてリリース、その後CD化されている。

 あと、その頃のお仕事で面白かったのは、ジュリーこと沢田研二さんとのデュエット。当時沢田さんは、女性作家や女優さんなど、著名な女性たちが詞を書き、それに曲をつけるという企画をご自身のラジオ番組でやっていらっしゃったんです。で、私は、落合恵子さんが詞を書いた「ウィークエンド・サンバ」という曲をデュエットさせていただいて。とってもいい思い出になりました。