昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

なぜトランプ大統領はイラン攻撃の手を緩めたのか

中西輝政・京都大学名誉教授が地政学で読み解く

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 国際, 政治

 米軍が1月3日にイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害して以来、緊迫していたアメリカとイランの関係だが、本格的な衝突は一旦回避されようとしている。

 司令官殺害後もトランプ大統領は「彼らが何かすれば、大規模な報復が待っている」と強気の姿勢を崩さず、6日には、国連のグテーレス事務総長が「地政学的な緊張が今世紀最大レベルに達している」とする声明を発表。8日にはイランが、司令官殺害の報復として、イラクに駐留しているアメリカ軍の基地を弾道ミサイルで攻撃する事態に発展していた。
 
 ところが、トランプ大統領は、そのイランのミサイル攻撃を受けて行われた8日の演説で「アメリカは平和に身をささげる準備ができている」として、それまで明言していた報復攻撃を行わないことを示唆した。

 なぜ、トランプ大統領は態度を一変させたのか--。

ソレイマニ司令官の弔問に訪れるイランのロウハニ大統領 ©AFLO

 今年の情勢について、「2020年は、超大国・アメリカの衰退が明確になる一年になるかもしれません」と語るのは、国際政治が専門の中西輝政・京都大学名誉教授だ。中西氏は、年頭の「週刊文春デジタル」のインタビューで、世界が抱える“アメリカリスク”を分析している。

軍事力は誇示できても使えない

 トランプ大統領の政策について「海外に展開しているアメリカ軍を撤退させ、『世界の秩序に責任を負うような重荷を投げ捨て、国内の改革を優先させよう』という、孤立主義的なアメリカファースト」と分析する中西氏。リーマンショック以降、混迷するアメリカの海外展開のスタンスを、次のように語る。

「アメリカは“世界の警察官”として世界の至る所に関与してきました。いまやアメリカ国民も、長年の戦争に飽きて精神的に大きく疲弊しています。たしかに、今も世界中に介入できるだけのパワーを持っている一方で、この状況下では本当は自由に使える力はごくわずかなのです。すなわち軍事力を誇示する意味では効果はあっても、実際にそれを使ってしまったら、超大国としての地位も揺らぎかねない、という構図にあるわけです」