1月7日、「新年の辞」を発表した文在寅大統領は終始、硬い表情だった。内容の3分の2は国内の経済分野について言及し、その後、外交分野では南北関係が半分、続いて米中日露の順で駆け抜けるようにそれぞれわずかに触れた。中道系記者が言う。
「4月の総選挙をにらんで国内で不満が高まっている経済分野に時間を割いた格好でしたが、今年、外交分野においてはさらに厳しい局面が予想されていて、文大統領は内心、暗澹たる気持ちだったのではないでしょうか」
厳しい局面とは果たして?
2020年、外交分野から韓国を読み解くキーワードを拾った。
徴用工問題の行方はいまだ不透明
まず、「新年の辞」で「協力関係をさらに未来志向的に高める」とした日本には、「輸出規制」の解除を求めると話した。徴用工問題については言及がなかったが、「韓日関係は『輸出規制解除』の通商と『徴用工問題』の外交の2つの当局間協議が最大課題」(前出記者)といわれ、なかでも今もっとも懸念されているのは、被告となっている日本企業の韓国内資産の「現金化」だ。早ければ今春にも現金化されるという見方もあり、その前に解決へ向けての動きが出てきているのは周知のとおり。
昨秋にわかに浮上した「文喜相国会議長案」(「1+1+α(日韓企業+日韓の個人募金)」)は昨年12月に韓国国会で発議され、現在は所管の行政安全委員会にて審理待ちだ。今期国会で立法化までこぎ着けられるかどうかが焦点となるが、「道は険しい」と言うのは前出の記者だ。
「294人いる国会議員の中で発議者に名を連ねたのは文国会議長を含めたわずか14名でした。今年の4月に行われる総選挙への影響を怖れてみな及び腰。今期国会では案件が山積みですし、正直その中での議長案の優先度は低い。総選挙の政局絡みで今国会で可決されなければ、そのまま自動破棄となる可能性は否定できません」
そもそも、12月の日韓首脳会談を見ても分かるとおり、日本に謝罪と賠償を求め、原告となっている被害者の同意なくしては協議を進めないという「被害者ファースト」と「司法の判断尊重」を強調する文大統領と「韓国の責任」とする安倍首相の間に妥協点はみられない。
さらに、文議長案に反対を表明していた被害者を支援する弁護団は1月6日、日韓同時に記者会見を行い、徴用工問題を考える「日韓両国の協議体の創設」を提案した。協同体には日韓双方の弁護士、被害者を支援する市民団体をはじめ、学者、政治家なども参加して解決に向けて話し合いを行っていくというものだ。
しかし、その被害者側も、弁護士や市民団体が支援する側と被害者家族などで構成される側で対立中。両者間で話し合いが持たれるのかどうかは未定だ。また、前出の日韓両国の協議体の創設」案については、「外交当局間の協議を無視した形で非現実的」(前出記者)という見方もある。
日韓、さらに韓国内でも複雑に絡まっていて、解決への「神業」は見当たらない。