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極めて自制的なイランと、混迷が深まる米国
そもそも米国の核合意離脱後、イランは核合意の履行停止を段階的に重ねているが、それも極めて自制的だ。欧州など国際社会に対する「このままでいいのか。米国に圧力をかけてくれないか」という要望が透けてみえる。5日は最終段階として遠心分離機の数の制限解除を宣言したが、それでもIAEAとの協力継続を明言している。
今回の人的被害を避けた報復作戦もその延長線上にある。願わくは次期米大統領選でトランプが敗北し、核合意の再生を果たしたいというのが本音だろう。
むしろ当惑しているのはイランと目と鼻の先の湾岸諸国だ。トランプ政権と仲良しで、一時期は対イランでイスラエルとの謀議まで報じられていたサウディのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子はイエメン軍事介入という「火遊び」の失敗、自国ジャーナリスト(カショギ氏)殺害疑惑などで懲りたのか、最近では水面下でイランとの緊張緩和を探っていた。今回の米軍によるソレイマーニー爆殺にも苦虫をかみつぶしているだろう。早速、事態鎮静化のために弟のハーリド副国防相の関係国訪問を発表した。オマーンやカタールも仲介に乗り出している。
1979年のイラン革命以降、米国はイランへの憎悪を露わにしながら、そのイランの脅威であったイラクのサッダーム・フセイン政権とアフガンのターリバーン政権を潰し、イランは意図せず「漁夫の利」を得てきた。そしていま、身の丈に合わぬ者たちが権力を握ったことで、米国の対イラン政策の混迷は一段と深まっている。