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写真映えってなに? 伝説の写真家が教えてくれる「眼の歓び」という“たった1つのコツ”

アートな土曜日

2020/01/11
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日本美術からの影響も大きかった

 くわえてソール・ライターの写真は、構図と色使いが独特でたまらない。前景に壁や柱、ときに人の横顔を入れ込んでいく絵づくりは大胆そのものだ。全体として抑えた色調のなかにビビッドな差し色を入れて、そこに観る側の視線を誘導させるのも、心憎いほどにうまい。

ソール・ライター 《赤い傘》 1958年頃、発色現像方式印画 ⒸSaul Leiter Foundation
ソール・ライター 《薄紅色の傘》 1950年代、発色現像方式印画 ⒸSaul Leiter Foundation

 そういえば生前の彼は日本美術に造詣が深く、俵屋宗達のファンであることを公言していた。驚きのある構図と色使いは、日本的な美から大いに学んだのではないか。

 彼の写真が指し示すのは、写っているものや状況についての説明や、何らかの意味ではない。生命感あふれる光景に触れた! という純然たる眼の歓びだ。

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 本人はこんな言葉を残している。

「私に写真が与えてくれたことのひとつ、それは、見ることの喜びだ」

 そう、たしかに「見ることの喜び」さえあれば充分。それ以上に何を望むことがあろうか。素直にそんな気持ちにさせられる展示だ。

展示会の様子
写真映えってなに? 伝説の写真家が教えてくれる「眼の歓び」という“たった1つのコツ”

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