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「先生との出会いがなければ、私の学問人生はなかった」磯田道史が振り返る“わが師・速水融との出会い”

図書館で出会った1冊の本に衝撃を受けた

note

「圧倒的な革新性は、高校生の私にも分かりました」

磯田 どうしても中身が気になりました(笑)。しかし、書架の本を開けてしまえば、「見学」ではなく「利用」となってしまいます。でも我慢できません。京都府立大学の合格は決まっていたので、「あと20日もすれば“大学生”だから」と、周りをキョロキョロ見回しながら、ついつい本を開いてしまったのです。

 驚きました! 「江戸時代の庶民の暮らし」がテーマなのに、生物学の教科書でしか見たことがないような「生存曲線」(ある種の生物の生活史において、時間経過に従って個体数がどのように減ってゆくかをグラフ化したもの)が描かれていたからです。1973年の初版刊行から17年近くも経っていたのにあまりに斬新で、衝撃を受けました。

速水融氏

 あの頃“歴史の本”と言えば、マルクス主義の革命目的史か、無味乾燥な制度史研究ばかり。『宗門改帳』から「農民の結婚年齢」や「平均寿命」といった“数字”をコツコツ出すなんて尋常ではありません。

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「なんて学者だ!」と思いました。“数字”が出せるということは、時間や空間が異なる社会との比較も可能になります。その圧倒的な革新性は、高校生の私にも分かりました。

 その後、速水氏に学びたくて慶應大を受け直した磯田氏だが、“運命のいたずら”が待ち構えていた……。

出典:「文藝春秋」2月号

 磯田氏が速水融氏との出会いについて存分に語った「わが師・速水融が変えた『江戸』の貌」の全文は、「文藝春秋」2月号に掲載されている。

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わが師・速水融が変えた「江戸」の貌
「先生との出会いがなければ、私の学問人生はなかった」磯田道史が振り返る“わが師・速水融との出会い”

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