以前は心が動かされることはなかったのだが、なぜだか最近、花を眺めるのが楽しい。
我が家には母の作ったちょっとした花壇があるのだが、この春は蕾の段階から咲くのが待ち遠しく、気づいたら満開になるまで毎日のようにその様子を写真に撮っていた。街を歩いていてもそうだ。どんな嫌なことがあっても、道端の生垣に咲いているツツジを目にするだけで気持ちが晴れやかになったりする。
こんな自分にも花を愛でる心があったのか――あまりの変化に我ながら驚く毎日だ。
そういう訳で、今回取り上げるのは『花の子ルンルン こんにちは桜の国』である。
花の精「花の子」の末裔であるルンルンは、フランスの田舎町で祖父母と花屋を営んでいる、花を愛する心優しき少女。「花の子にしか見つけることができない、七色の花びらをもった花」を探してほしいというフラワーヌ星の使者の頼みを受けて世界を旅することになる。その花を見つけた者には幸せがもたらされるという。そして、ルンルンは使者に与えられた魔法の力で、花探しの旅の行く先々で出会う人々を救っていく。
本作は毎回そんな物語が繰り広げられるテレビアニメの劇場版で、「東映まんがまつり」の一本として公開されている。画面の隅々を彩る色とりどりの花々。展開されるハートウォーミングな物語――以前の筆者からすると、それは唾棄したい世界といえた。だが不思議なことに、花を愛でる気持ちが芽生えると、この世界のことも愛しく思えるようになっていた。そんな流れで、本作を久しぶりに観なおしてみることにしたのだ。
今回ルンルンが訪れるのは桜満開の季節の日本。だが、「自分より美しいものは許せない」と、美しい自然を憎む悪役・トゲニシアは名所の桜を次々と枯らしてしまう。
そうはさせまいと立ちはだかるルンルン。その手段がえげつない。「自分の顔をよく見るといいわ」と言いながら扇子を投げつけていく。そこに映し出されるのは、トゲニシアの皺くちゃの顔だった。動揺するトゲニシアにルンルンは容赦なく言い放つ。「あなたの心がそのまま顔に現れたのよ」「その顔でも桜に勝てると思ってるの。桜の方がずっとずっと美しいわ」その言葉を背に、トゲニシアは退散していった。
前に観た時は「ここまで追い込まんでも――」とルンルンに反発を感じたが、今は違う。花を荒らす者は罰せられて当然――そう思うからだ。
ルンルンは破壊の進む日本の自然の復活を願って去っていった。そんなルンルンの想いを胸に、花を愛でる心を忘れずにいたいと誓った。