「肉といえば牛」の西日本でとんかつが好調な理由
――チェーン店ですとどこの店でも同じ味であるという安定性も大事だと思います。そのあたりではどういった工夫をされているんでしょうか。
佐藤:とんかつを揚げるにあたって、自社開発した独自のリフトフライヤーを使っています。企業秘密のさまざまな工夫がしてありまして、誰が作っても、いつでも同じように美味しいとんかつが揚げられるものになっています。ここにもかなり力を入れていますね。
――技術開発にも力をいれているんですね。
佐藤:そうですね。とんかつをめぐる技術も日進月歩です。わたしは15歳から松屋で働き始めて31年になりますが、いろいろと変化していますね。
――え! 15歳から松屋で働いていたんですか!
佐藤:ええ、最初は松屋の1号店である江古田店でアルバイトを始めたんです。まだ松屋が40店くらいしかありませんでしたが、このころは一日の売上が200万円を超える店舗もありました。まだまだこれからだぞ、という勢いがあった時代ですね。それで23歳で社員になったんです。
――生粋の松屋っ子なんですね。
佐藤:長くは勤めていますよね。それで25歳くらいから15年間は大阪にいて、本部からとんかつ店の担当を命じられ東京に戻ってきたんです。ですから、とんかつを始めてからまだ5、6年ですね。「松のや」もなんとか100店舗を達成して、軌道に乗ってきた感はありますが、ちょっと気を緩めるとすぐに追い抜かれていく業界ですから、日々チャレンジだと思っています。
――大阪に長くいらしたとのことですが、西日本には「肉といえば牛肉」という雰囲気がありますよね。全国展開するとんかつ事業を手がける中で西は鬼門じゃないですか?
佐藤:いやこれがそうでもないんですよ。西で初めて出したとんかつ店は大阪の難波にある「なんさん通り店」なんですが、実はここ、全国の中でも売上の高い店の一つなんです。わたしも出店当初は「西で豚はどうなんだろうな」と正直思ってたんです。これは嬉しい誤算でした。
――何か理由は考えられますか?
佐藤:まあ考えてみたら、大阪は串かつ文化なんですよね。だから牛だ豚だというわけでなく、カツは受けるんだ、ということじゃないかと思っています。広島や九州なども含め、西日本では概ね好調です。