「週刊文春」(2019年1月3・10日号、2月7日号)の記事で明らかになった、フォトジャーナリスト広河隆一氏(76)による、セックスの強要や裸の撮影などの性暴力・セクハラ。
実情を調べていた検証委員会は昨年末、「報道された内容は事実であると確認した」とする報告書を公表した。
涙を流す被害者たちから話を聞き、上記記事を書いた私にとっては、当然の結論だ。
報告書は、文春報道で触れなかったセクハラやパワハラ、会社関係者の責任にも言及した。当初、広河氏や会社に厳しい記述は期待できなかっただけに、踏み込んだ内容になったのは率直に評価したいと思う。
報告書には、広河氏が検証委の聴き取りで語ったとされる言葉が散りばめられている。グロテスクな思考と感覚の開陳にあきれるばかりだが、その中に、この問題を取材してきた者として看過できないものがあったので、指摘しておきたい。
「悪質な代償型セクハラである」
その前に、検証報告書の要点を紹介しておこう。
検証は、広河氏が発行していた月刊誌「DAYS JAPAN」の発行元(株式会社デイズジャパン)が設置した、外部の有識者3人による検証委が進めた。
「DAYS JAPAN」や広河氏と関わりのあった45人にヒアリングを実施。その結果、広河氏は「DAYS JAPAN」を発行していた2004~2017年に、少なくとも以下の加害行為をしたと認定した。
・性交の強要 ―― 3人
・性交には至らない性的身体的接触 ―― 2人
・裸の写真の撮影 ―― 4人
・言葉によるセクハラ(性的関係に誘うなど) ―― 7人
・環境型セクハラ(アダルトビデオを見える場所に置く) ―― 1人
(複数種類の被害を受けていた女性は、被害ごとにカウントされている)
これを踏まえ、広河氏の行為は「著名なフォトジャーナリストとしての肩書きを濫用し、女性たちから自身への尊敬の念に乗じ、権力性を背景に重ねた、悪質な代償型セクハラである」と断じた。
明快な「有罪判決」である。
この検証結果を受け、被害女性の1人が今月、デイズジャパンに慰謝料など400万円の損害賠償を請求した。
「これだけの事件を起こしながら、会社が何の責任も取らずに終わったという前例を作りたくないんです」と女性は話す。
デイズジャパンはどう応じるのか。
問い合わせると、「個別の事案に応じて誠実に対応してまいります」という形式的な回答が、代表清算人・川島進氏(元DAYS JAPANアートディレクター)、竹内彰志氏、河﨑健一郎氏(ともに弁護士)の連名で返ってきた。