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被害女性に謝罪することを拒んだ広河氏

 そんなふうに女性たちに迫った記憶はない、と広河氏は言うだろう。

 事実、11回応じたという検証委の聴き取りに対し、広河氏は次のように言って、被害女性に謝罪することを拒んだという。

「思い出せないのに、事実と認めて謝るというのは、謝罪を受けた人にとっても謝る人にとっても許されることではないと思う」

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「相手に会って顔を見て話したら多くのことを思い出せるかもしれないが、それもできないならどうしたらいいのか」

「嫌な思い、素敵な思いをした人にとっては大事な記憶として残るかもしれないが、嫌な思いをさせたことがないと信じている自分にとっては、記憶にとどめる理由がなかったのかもしれない」

レバノンを取材する広河氏(2014年) ©共同通信社

 これも広河氏の恐ろしい内奥をのぞかせる説明だ。広河氏は、性行為の強要を「記憶にとどめる理由」のないことだったと言っているに等しい。

 女性たちにとって忘れたくても忘れられない恐怖と混乱と屈辱の体験は、広河氏にとっては何ら印象に残らない、自然な行動だったというのだ。

 一方で、女性との間に「温かなもの」があったことはちゃんと覚えていると、広河氏は訴える。

 この落差に唖然とする。

なぜ女性たちは広河氏にやさしい言葉をかけたのか

 広河氏に性行為を強要された女性たちには、人としての尊厳を踏みにじられた後も、広河氏に一見やさしい言葉をかけた人がいる。

 ある女性は、風邪をひいた広河氏に「お大事になさって下さい」などとメールを送ったという。別の女性も、広河氏の健康を気遣うメールを送信したことがあった。

 広河氏は、これらの声がけを「温かなもの」に含めているのかもしれない。

 だとすれば、広河氏は大きく間違っている。

「DAYS」最終号

 女性たちはメールを送った目的を、次のように私に説明した。

「(広河氏を)爆発させたくなかった。少しでも上機嫌に事務所に来させるための布石だった」

「再び性的な暴力を受けるのが怖くて、社交辞令を言って様子を探っていた」

 彼女たちにとっては、温かな要素などみじんもなかった。心の中は最初から完全に冷え切っていたのだ。