1月13日に発表された第92回アカデミー賞候補作に、ポン・ジュノ監督の新作『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を含む6つの部門でノミネートされた。韓国映画としては史上初のノミネートとなる、まさに歴史的な快挙となった。
遡ってみても、昨年のカンヌ国際映画祭で、これまた韓国映画初となる最高賞パルム・ドールを受賞したことはもちろん、アメリカの映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では、批評家レビューの100%が支持評価を下すなど、『パラサイト』に対する、桁外れの評価が世界のあちこちで見受けられた。興行面においても、韓国国内では累計観客動員数が1000万人を越え、フランス、台湾、香港など、いくつもの国や地域で爆発的なヒットを遂げている。
私自身もまた、この映画をTOHOシネマズ日比谷の先行上映で(何度か繰り返して)鑑賞し、この評価の高さにも納得できた。まさに傑作の名に恥じない作品であると思う。(*以下の記事では、『パラサイト』の内容が述べられていますのでご注意ください)
「格差」はついに埋まらない
『パラサイト』のテーマを挙げるとすれば、「格差社会」となるだろう。全員が失業中の低所得層のキム家が、IT企業を経営する富裕層のパク家に「寄生」をはじめることから物語は始まる。
作中では、両家のあいだにある「格差」が嫌と言うほど強調されることとなるのだが、これは残念ながら、韓国の現状から乖離した設定とは言えないだろう。近年の韓国における所得格差は著しく拡大しており、雇用率もまた低下の一途を遂げている。2017年の統計では、相対的貧困率(その国や地域の大多数よりも貧しい人の割合を指す)が65歳以上で43.7%という数字が出ている。
そして、このような問題は韓国に限ったものではない。6人に1人が「貧困層」と呼ばれ、失業者や非正規雇用者の生活基盤の低下が声高に叫ばれる日本にもまた身近なものであるはずだ。奇しくも『パラサイト』の前年、カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞し、日本でも大きな注目を浴びた『万引き家族』(是枝裕和、2018年)もまた貧困層にスポットを当てた作品であった。
そんな本作で私が一番に驚かされたのは、作中において、この格差がついに埋まることがなかった点だった。最後には何かしらの大逆転が起こるのではと予想しただけに、むしろ「格差社会」が不変であることを強調するような、本作のラストは(もちろん悪い意味ではなく)意外だった。