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激しい抵抗がなければ改正後の刑法でも起訴は難しい

 2017年6月、刑法が改正され、翌7月に施行された。これによって、「強姦罪」が「強制性交等罪」となった。性器挿入だけでなく、肛門性交や口腔性交も対象になった。しかし、今回のように、明らかな激しい抵抗をしてない場合は、難しい。というのも、「暴行又は脅迫を用いて」という文言は残されたままだ。直美さんは、けがをするほどの抵抗はしてない。被害を受けている中で、2017年の性被害を思い出したからだ。

「前回の事件を思い出して、フラッシュバックして過呼吸になる手前で苦しいのを我慢して、ずっと泣いていたんです。このままだと殺されると思って、抵抗できませんでした。ずっと嫌だ、嫌だとは言っていたんですが」

 また、年齢が18歳になる前だったために、県青少年健全育成条例による「淫行」による起訴はできないものかと筆者は思ったが、直美さんには、特に説明はなかったという。

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 もうすぐ誕生日を迎えて20歳になる。そのタイミングで民事訴訟を考えている。法テラスに連絡をすると、弁護士を紹介してもらったが、性被害に強いかどうかはわからない。そのため、筆者を経由し、性被害の相談にのっているNGOの紹介で、性被害に強い弁護士とつながった。

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 裁判への思いについて、直美さんはこう語る。

「裁判をして得たいものは、たとえ負けても勝っても犯人に、被害者である私が苦しんでいること、辛い状況でいることを知って欲しいのです。そして、可能であれば謝罪の手紙がほしい。それじゃないと納得できないし、自分でもずっとひきずってしまいます。裁判が終わっても苦しみは消えないかも知れませんが、希望が少しでもあるから勝つために頑張ろうと思っています。犯人が負けたら、思い出して再犯しなくなるかもしれません」

「殺して欲しいっていう気持ちは前と変わっていません」

 気になるのは、座間事件への思いだ。事件後の取材では、「(被告のところへ)行っていればよかった」と話していた。改めて、このタイミングで聞いてみた。

「また、出てきて欲しいなって思います。まだ会って殺して欲しいっていう気持ちは前と変わっていません。亡くなった人も苦しんでいたのだと思います。だから『承諾殺人でいいんじゃない?』って思います。似たような人がいるのなら殺して欲しいです」

 性被害に遭い、「殺される恐怖」を味わった直美さんだが、タイミング次第では、「殺されたい」「死にたい」という気持ちは変わってない。

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渋井 哲也

筑摩書房

2019年9月6日 発売