ブラック入国審査マン
彼は某空港でひたすらパスポートのチェックをしている。あの入国審査をする人だ。1日あたり500~600件ほどのパスポート確認を、朝10時から翌朝10時まで、ほぼぶっ続けで行う。その間、座りっぱなしの24時間労働。想像するだけで気分が悪くなりそうだ。
そんなヤバい仕事にもかかわらず、彼は法務省所属の「国家公務員」の枠で仕事をしている。彼も「安定志向で国家公務員になったはいいけど、入ってみたらトラックの運転手ばりのブラック労働だった」と言っていてウケた。
労働内容はブラックなのに、形は国家公務員なので、残業代はほとんど出ない。法務省から予算があまり出ていないのが問題だそう。航空会社は営利なのでフライト本数は増え続けている一方、政府から予算は出ないので入国審査に人員増加はなく、既存の入国審査員たちの負荷だけがどんどん増すという構造に陥っている。被害者もいいところだ。「東京オリンピックが決まったときは死ねって思いましたね」と笑いながら言っていたのには、狂気を感じた。
話はもっとディープな領域に移った。彼も4年間働いていて、一度だけ偽装パスポートを見破ったことがあるという。入国審査官は基本的にビザのある外国人のパスポートは、ビザの部分しか参照しないことが多く、その穴をついた、「ビザだけは本物で、ほかは偽装されたパスポート」が存在する。実際に、彼が見破った偽装パスポートはそのパターンで、すでに2回ほど日本への入国を成功させていた。おそらく、かなりの数が違法入国していると思われる。彼に偽装パスポートを見破られた外国人は泣いて泣いて、母国に強制送還されたという。
脊椎損傷マン
彼は、電動の車椅子で登場した。はじめて「車椅子OK」という条件で店を探せて嬉しかった。実績解除。エクセルシオールカフェは車椅子OK。
頚椎というのは首の骨で、「ヤっちゃうとやばい骨ランキング」ではだいぶ上位に来る。孫悟飯がリクームにやられたシーンが有名。何もできなくなる。仙豆必須。
そんなわけで、彼は「乳首から下の感覚がない」らしい。原因は「高校2年の頃に、友達と酒を飲んだ勢いで小学校のプールに忍び込むことになり、柵からダイブしてプールに飛び込んだら水が入ってなかった」というシュールな事故。
頚椎損傷とかは交通事故で貰ったりすると、億単位で損害賠償が取れたりするんだけど、彼の場合は自業自得なので、まったく金が降りず、親も自己破産してたりしている家庭で、今は生活保護と障害者手当で暮らしている。月16万円。
施設に入ればほぼタダで生活できるけど、施設はメシもまずいし、外出するのにも許可が必要で、気が滅入ってしまうから賃貸を借りて生活しているらしい。家賃は6万円ほど。バリアフリーのマンションなどは家賃が高すぎて住めない、と言っていた。
帰り際に「あれ? そういえば駅の改札までどうやっていくの?」となり、初めて「車椅子で改札口まで降りられる入り口」を探せたので嬉しかった。結局わからなかった。
彼は指先も動かないので握力がないのだけど、腕力はあるので指がふにゃふにゃになりながらフリックする。個人的にツボだったのは、そんな彼ですら「音声入力は使わない」という事実だった。どんだけ需要ないんだ。
ちなみに車椅子生活で不便なのは「だいたいのキャバクラに入れないこと」らしい。たしかに地下だもんね。
あと「性的な興奮をまったくしなくなった」「どうにかしたい」と言っていたので、知り合いのセックスカウンセラーを紹介しておいた。脳イキできますように。