学生時代は東大の寮でカビを食い、就職後も身のまわりに無頓着で同じ靴下を一ヶ月履きつづけた――。
かつて、このような官僚たちのどうでもいいエピソードを満載した雑誌があった。1975年11月から2005年2月にかけて刊行された『月刊官界』がそれである。
めくっても、めくっても、ひたすらスーツ姿の中高年男性ばかり
名物コーナーの「官界人脈地理」では、中央省庁の幹部が、顔写真、学歴、採用年次、性格、素行、趣味などとともに詳しく紹介された。そこに花(?)を添えたのが上掲のごときエピソードだった。
いわく、キャバレー通いで課内の研究会予算を赤字にした。いわく、皇居一周を27分で走破した。いわく、ゴルフでホールインワンを2回達成した。いわく、演歌を700曲、軍歌を150曲憶えていた――。
どうでもいい話ではあるものの、それぞれの人柄がよく伝わってくる。
同誌には、ほかにも、部局、審議会、労組、サークル、記者クラブ、はては天下り先の紹介コーナーまであったが、きわめつきはやはりグラビアのコーナーだろう。
「霞が関のスーパーエリートたち」などと銘打って、各省庁の事務次官、官房長、審議官、官房三課長などの全身写真が延々と巻頭を飾ったのである。めくっても、めくっても、ひたすらスーツ姿の中高年男性ばかり。
事務室での写真だけではなく、なかには、通勤途中の写真や朝の体操中の写真まである。さすがにカラーではないが、こんなに脂っこいグラビアもそうそうない。
『月刊官界』には「官界人脈地理」の地方版というべき「地方自治体人脈図」というコーナーもあって、県庁や政令市の幹部の動静まで取り上げられた。
官僚の動静は今日でも雑誌などで記事になるとはいえ、ここまでの頻度と精度で追求したものはほかに見当たらない。まさに官僚マニア垂涎の雑誌である。