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バッシングによる「官僚イメージ硬直化」は何をもたらしたか?

 それにしても、『月刊官界』の執筆者たちは、なぜかくも行き届いた官僚の動静を書けたのだろうか。それは、かれらの多くが記者クラブに所属する新聞社の記者だったからだ。

 よく知られるように、記者クラブは官公庁ごとに存在し、庁舎のなかに部屋を持っていて、公務員と同じように出勤し、日中の生活をともにする。それは癒着の温床と指摘される一方で、人柄や趣味などを詳しく把握できる素地にもなった。

 ただ、こうしたエピソードも、90年代半ばごろより徐々に掲載されなくなった。『月刊官界』は官僚よりも政治家を多く取り上げ、内容も一般の論壇誌と大差ないものとなった。

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 官官接待や「ノーパンしゃぶしゃぶ」事件などに端を発する官僚バッシングの高まりのなかで、かれらの言動が厳しくチェックされるようになり、あまりふざけた話は取り上げにくくなったのだろう。

前川喜平 前文科次官 ©時事通信社

 その結果、官僚は必要以上に無個性で清廉潔白なイメージを背負わされてしまった。官僚は、血が通わない忖度マシーンであり、風俗店への出入りも許されぬというわけだ。

 80年代以前ならば、「出会い系バー」通いなど今日ほど問題にならなかったかもしれない。硬直化したイメージが、かえって醜聞報道の価値を高からしめた。皮肉なことである。

 いたずらに過去を懐かしむわけではないが(そして『月刊官界』自体にも問題がないわけではないが)、きわどいエピソードが気軽に消費されていた時代があったことを忘れないでいたい。

 問題にすべきことはほかにたくさんある。読み手の側も、官僚の人間性についてもう少しいい加減になったほうがいいのかもしれない。