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「死ぬほどつらかった……」尿道に管を通す“膀胱鏡検査”

 血尿の原因を特定するには、尿道から膀胱鏡という内視鏡を挿入して膀胱内部を観察するしかない。もし、あなたの周囲に膀胱鏡検査の経験者がいたら、その時の感想を訊ねてみてほしい。検査を受けたのが5年以上前であれば、まず間違いなく遠い目をして「死ぬほどつらかった……」と述懐するはずだ。

 つい先ごろまでの膀胱鏡は、金属製の筒だった。直径約8ミリ。鉛筆ほどの太さの硬い管だと思ってほしい。硬いから「硬性鏡」と呼ぶ。この硬性鏡を尿道に押し込んで行く。普段は好きなところで自由に曲がっている尿道が、硬性鏡によって強制的にまっすぐになっていく。そして、先端が膀胱に到達すると管の内部にカメラなどの検査装置を挿入して内部を観察するのだ。

©iStock.com

 これは確かに痛そうだ。想像しただけで内股になってしまう。一度でも経験した人にとって、それはまさに武勇伝であり、多少の誇張を交えて周囲に吹聴しても誰も咎めることはできない。そして、そんな体験談を一度でも聞かされたことのある人は、恐怖心が先に立って、たとえ血尿が出ようとも泌尿器科の門をくぐろうとしない。結果として早期発見を遅らせてしまうのだ。

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「軟性鏡」で、痛みは従来の百分の一以下に

 ところが、医学の進歩はこの領域にも及んでいる。「軟性鏡」とよばれる、胃カメラを細くしたようなフレキシブルな動きをする膀胱鏡が開発され、今では大半の泌尿器科でこちらが使われている。

この内視鏡よりも細いのが「軟性鏡」 ©iStock.com

「過去に硬性鏡を経験したことのある人が軟性鏡で検査をすると、その苦痛の小ささに驚かれます。中には“痛みは従来の百分の一以下だ”と絶賛する人もいる。ただ、これはあくまで比較の問題であって、初めて受ける膀胱鏡検査が軟性鏡の人は、やはり怖がりますね。そもそも尿道にモノを入れること自体、経験がないわけですから」

 ちなみに成人男性の尿道は平均して18センチなのに対して、女性のそれは約3センチと短い。短いから女性のほうが尿失禁のリスクが高いのだが、短い分だけ膀胱鏡検査に伴う苦痛は小さい。どっちがいいやら悪いやら……。