突然“鉄のにおい”がする。
何だろう、と周囲を見回すが、これといって原因は見つからない。そもそもオフィスでパソコンに向かっている時に、“鉄のにおい”に見舞われる理由が思い浮かばない。
気のせいか――と思って再びパソコンに向かう。
しばらく仕事を続けるが、やはり、たしかに「鉄のにおい」が漂っている。鼻水が垂れそうな気配を感じて「ズズッ」とすすり上げたら、「鉄分」の香りはより濃厚となった。
「もしや!」と手の甲を鼻に当ててみたら、見事に手の甲は鮮血で染まった。あわてて立ち上がると、白いワイシャツのところどころに血液が……。今回は「冬場に増える鼻血」についての考察です。
「危ない鼻血」と「心配ない鼻血」の見分け方
「鼻腔内で出血すればすべて鼻血(鼻出血)ですが、一番多いのは鼻の入口にある“キーゼルバッハ部位”とよばれる場所。鼻血全体の95%がここからの出血と言われています」
そう語るのは、東京都西東京市にある安部医院院長で耳鼻咽喉科医の安部浩一医師。
同医師によると、鼻血の7~8割は「特に原因となる基礎的な病気がない出血」とされるが、中には鼻腔内の腫瘍や高血圧、動脈硬化、さらには血友病や白血病などの病気が背景として存在することもあるというから甘く見るのは禁物だ。
でも、いきなり出てきた鼻血に対して、それが危険なものなのか、あるいはとりあえず心配ないものなのかの判断は、素人には付きにくい。
「すぐに止まる鼻血であれば、とりあえず心配はいりません。逆にビューッと噴出するような鼻血や、いつまで経っても止まらない鼻血は要注意。勢いよく飛び出す鼻血は動脈性の出血の危険性があるので、早めに医療機関を受診すべきです。このタイプの鼻血は、左右の鼻の穴を隔てる壁(鼻中隔)から噴出してきます」(安部医師、以下同)